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コロナ時代の在宅看取り

2020年10月16日(金)

コロナ時代のほうが在宅看取りは増えている。

医療・介護スタッフの負担は平時より大きい。

概要を「月刊ケアマネジメント」に、書いた。→こちら

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月刊ケアマネジメント2020年11月号  

コロナ時代の在宅看取り

●コロナ流行地での在宅看取り  

コロナ流行地では病院や施設は、完全に面会謝絶になります。普段の面会も終末期の面会はもちろんのところ看取りにも立ち会わしてもらえないところもあります。人生の最終段階で愛する人に会えないような規則はこれまで誰も経験したことがない事態です。そうなると自由に面会できる自宅に帰り、在宅看取りを視野に入れた在宅療養を支援するケースが全国的に増えています。病院や診療所の外来患者数は激減しました。一方、在宅需要は増えて、コロナ禍のなかかえって忙しくなったというケアマネさんが多いでしょう。今回、コロナ時代の在宅看取りについて考えてみましょう。 コロナ禍のなかでの在宅療養や在宅看取りにおいては多くの課題があります。

1)医療職がウイルスを持ち込まないか、

2)介護職が持ち込まないか、

3)家族が持ち込まないか、に分けて考えましょう。

1) 医療職は手洗いやマスクやガウンなどの個人防護具(PPE)が必要です。またそれを介護職に教える責務もあります。

2)介護職はまずは、感染の不安からサービスを控える事業所が出ます。デイサービスやショートステイが休みになればどうしてもホームヘルプの需要が増えます。しかし感染の不安から訪問を辞退する介護事業所や介護職が増えます。また介護事業所においてはどうしてもPPEが不足しがちです。調達資金も豊富ではありません。そもそもPPEの脱着の仕方を医療職に教えてもらわないといけません。医療職よりも介護職に大きな負荷がかかり、ケアマネさんは腐心します。

3)家族もウイルスを持ち込まない日常生活をしないといけません。またたとえば東京に住む子供たちがお見舞いのため帰省するという予定を聞いたら、「帰省前2週間は会食や旅行などを控えて」と伝えなけばなりません。

●利用者が発熱した時  

発熱=コロナ、ではありませんが、コロナ蔓延地の在宅患者さんが高熱を出したら多職種は内心「もしかしたら・・」と思うでしょう。医師は発熱の原因の推定をしますが、経験的には誤嚥性肺炎や胆道感染症のことが多いものです。しかしどうしてもコロナ感染を否定できない時が現実にあります。 では、在宅患者さんに自宅でPCR検査を行うことは可能でしょうか?東京や沖縄では在宅医が居室でPCR検査を行っています。筆者の診療所がある尼崎市においても居宅で唾液によるPCR検査を行政検査として行えます。

しかし、コロナ蔓延地において余命いくばくもない在宅患者さんの発熱に対して、果たしてPCR検査をやるべきかそうでないのか、という命題は大変悩ましいものです。なぜなら、もしもPCR陽性だった場合、「入院して隔離し病院での看取り」とするのか「それでも在宅看取り」とするのか究極の選択に迫られるからです。陽性だった場合は葬儀や火葬場にも大きな影響が及びます。しかし陰性が科確定すれば、故人や家族の名誉を守れる(?)という利点もあります。もちろん在宅スタッフも安心してケアを提供することができます。 「もう終末期なので知らぬが仏でPCRなんてやらないほうがいい」という意見も当然あるでしょう。しかし不安におののく介護ヘルパーの抵抗にあうかもしれません。万一感染者だった場合、ヘルパーが感染して他の在宅患者さんにうつしてしまうかもしれないからです。実際、すでにそんな裁判が報じられています。

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●ヘルパー事業所が遺族から訴えられた

新型コロナ感染のため82歳で亡くなった女性の遺族の男性が、広島県三次市の訪問介護事業所の運営会社に計4400万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴した。

担当ヘルパーが訪問を控えていれば母親の感染は防げたとし、運営会社の安全配慮義務違反や使用者責任を問うている。訴状によると三次市で1人暮らしをしていた女性は4月3日に発症し、9日にPCR陽性と判明。広島市内の病院に入院したが19日にコロナ肺炎のため死亡。

実は10日に陽性が判明した50代のヘルパーの訪問サービスを3月23、27、30日と4月2、6日に受けた。このヘルパーは3月31日に発熱と味覚・嗅覚異常があったが、翌日にいったん症状が改善。原告側はほかに母親を感染させたと考えられる人がおらず、ヘルパーの親族にも新型コロナが疑われる症状が出た4月1日までには、自身の感染可能性を十分に認識できたと主張。ヘルパーが訪問サービスを回避すべき注意義務を怠り、運営会社に損害を賠償する責任があり、運営会社は安全配慮義務を怠ったとも指摘。中国新聞によると遺族の男性は「ヘルパーを交代させていれば母の命は奪われなかった。運営会社は責任を認めて謝罪してほしい」と話している。

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●ストレスを前向きに転換

上記の訴訟は、ヘルパーがうつしたという確実な証拠が無いので有罪にはならないと考えます。しかし同様のクレームが全国で増える可能性は十分あると思います。介護事業所はこの事例の各時点においてどのような対応をすべきか、具体的にシミュレーションをして全職員に教育しておく必要があります。ケアマネも同じことです。 こうしたリスクを負いながらの在宅支援や看取り支援になるので、在宅患者が発熱した途端にケアから手を引くスタッフや事業所が必ず出てきます。すると特定の事業所の負担が高まってしまいます。また終末期になればなるほど、サービスの回数や量、関わる人数や職種が増えるというジレンマもあります。各スタッフのストレスも相当高まるので産業保健としてのメンタルケアも必須です。「コロナ禍においては在宅療養が一番!」と言ったところで、以上のようなリスクを背負いながらの日常業務になることを覚悟しておくべきです。 そのためには、地域の多職種が本稿で述べているような課題や看取りに至るまでの具体的なイメージを共有しておくべきです。さらにコロナ禍を、事業所間の垣根を越えた連携、さらに医療との連携など連携を深めるいい機会である、と前向きに受け止めることが肝要です。

●在宅看取りは遠隔看取り  

遠隔診療やオンライン診療と聞くとなにか特殊な機器を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかしなんのことはない、携帯電話を活用した在宅診療のことです。コロナ禍においてオンライン診療において動画は必須ではなくなりました。今回、ケアマネや介護スタッフには普段なにげなくやり取りしている携帯電話での会話がオンライン診療そのものであることをケアマネも知ってください。 ご家族と看取りまでの人生会議を充分に行ってきた方が深夜に亡くなった時、まず在宅医に電話がかかってきます。誰かが呼吸停止を見届けていたら死亡時間を確定します。しかし、深夜に介護者がふと目覚めたら息が止まっていた、という場合は話し合いでその時間を死亡時間とします。筆者は深夜の看取りの場合、オンライン診療で死亡時間を確定して朝一番の往診で死亡診断書を書いています。 しかしそれを知らないケアマネや介護職が慌てて救急車を呼んでしまうことがあります。その結果、既に亡くなっていれば自動的に警察が来ます。現場検証や事情聴取と御騒ぎになった、なんて経験をしたケアマネがいるかと思います。それがトラウマになり看取りには関わりたくない、ましてコロナ禍のなかでは、というケアマネもいるでしょう。しかし日本は法治国家ですから在宅看取りも法律に基づいて行われます。看取りの法律を知らないケアマネは自分自身が警察の事情聴取を受ける羽目になります。

●看取りの法律とは医師法20条

在宅看取りは医師法20条に基づいて行われています。医師法20条とは診断書や処方箋の発行についての内容で「医師は診察すれば診断書を発行できる」となっています。逆にいえば「診察しないで診断書を書けば」罪に問われます。つまり、死亡後であっても患者さんを診さえすれば死亡診断書を書くことができます。ただし老衰や肺炎やがんなどで徐々に衰弱していく過程を主治医が定期的に診察して死期が近いことが分かっていることが前提です。医師は2週間に1回程度訪問していますが、それはイザという時に死亡診断書を書くための条件でもあります。  ややこしいことに医師法20条には「但し書き」という文言があります。「但し、診察後24時間以内に死亡した場合はその限りではない」と書かれています。これは「最後に診察をして24時間以内に亡くなった場合は医師がそこに行かなくても死亡診断書を書いてもいいですよ」という意味です。「ええ!?人が死んだのに行かなくて死亡診断書を書いていいの?」という声が聞こえてきます。でも本当に「行かなくて書いてもいい」のです。すなわち医師法20条は昭和24年に施行されたなんともおおおらかな法律です。

●「119番と平穏死」

 しかし医師法20条に続く21条とは「医師は殺人死体を診たら24時間以内に警察に届けなさい」という内容です。20条は診断書の法律で21条は殺人死体の法律で、両者は無関係なのですが、偶然にも両方に「24時間」という数字が出ているのでいつのまにか20条と21条が混同されて「ワシは24時間以内にこの患者を診ていない。だから死亡診断書を書けない。だから警察に届けなければいけない」と誤解をしている医師が実に多いことは嘆かわしいことです。 死亡時刻とは医者が到着する時間ではなく、息が止まった(だろう)時刻。よく分からない場合は推定でも構いません。しかし法律の誤解が蔓延した結果、不要な警察介入が毎日全国各地で起きています。詳しくは「平穏死と119番」(大和書房)という近著に書きました。どうかケアマネも正しい法律の知識を学んでください。  以上、コロナ時代の在宅看取りを概説しました。一方、コロナ確定患者の在宅看取りに関して筆者は一例も知りません。しかし今後の蔓延状況によってはそれが求められるかもしれません。地域の多職種は次の課題と受け止めるべきです。

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この記事へのコメント

24時間以内に診ていないから死亡診断書は書けない、と誤解して警察を呼ぶ医師がいるとは驚いた。先生がこんなに頑張ってみんなに伝えているのに当の医師で解っていない人がいるとは…医者って何なんでしょう?ちょっとびっくりしました。

Posted by 匿名 at 2020年10月16日 09:01 | 返信

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