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町医者がコロナにできること

2021年02月24日(水)

今回のコロナ禍において町医者は「蚊帳の外」のような扱いだった。

でも「かかりつけの患者さん」からの発熱相談をどう対応すべきか。

日本医事新報2月号は、「町知者がコロナにできること」で書いた。

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週刊誌を読むと、「日本医師会は開業医はコロナを診ないことが基本」らしい。

えええ?知らなかった。僕はただ、困っている人の力になりたいと思っただけ。


テレビや雑誌に出たので、同業者からは「厄介な町医者」と言われるのは仕方ない。

まあ、書籍や映画で散々叩かれているので、コロナで叩かれても当然だと、諦める。


web医事新報にアップされている →こちら

日本医事新報は本誌でもWebでも町医者は必読の医学雑誌である。


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日本医事新報2021年2月号  

町医者がコロナにできること  長尾和宏   →こちら


「自宅放置者」のケア  


 二度目の緊急事態宣言が発出された頃から、感染者数は明かに減少傾向に転じた。少しホッとした今、新型コロナ対応において当院における診療を振りかえり、町医者にできることを考えてみたい。


 4月の第一波から屋外のテントで発熱・風邪症状を訴える患者さんを1000人以上、診療してきた。9月まではPCR検査を保健所に依頼してきたが、10月からは唾液によるPCR検査が行政検査として可能となった。もちろん抗原検査も適宜、行ってきた。


 4月から初診時に胸部CTでコロナ肺炎を認、酸素飽和度の低下や炎症反応の強い人には、屋外でデキサゾン注射を行ってきた。 第三波において、かかりつけの患者さんだけでなく保健所から紹介される患者が急増しテント前に行列ができてしまった。年末から感染者数が多すぎて入院もホテル療養もできないため「自宅待機者」を余儀なくされる患者が急増した。自宅待機中に高熱や呼吸苦や不安を訴える人は保健所にいくら電話しても通じなかったという。もし通じたら皆、当院に電話するように言われたという。


 一時期は電話が鳴りっぱなしであった。発熱外来に加えて初期治療、そして自宅待機者の管理まで行うことになった。オンライン診療やドライブスルー診療だけでなく、携帯番号を教えて24時間対応を行ってきた。自宅待機者の未治療死を防ぎたい。ただそれだけで突っ走ってきた。26年前の阪神淡路大震災で「官に期待する前に自分がまず動く」と感じたが、それを実践してきた10ケ月間であった。


10ケ月間のコロナ診療実績


 この10ケ月間の当院におけるコロナ診療をふりかえってみたい。以下、検査数と陽性率を示す。1月の行政検査数は唾液PCR210名と抗原検査11名で計221名、うち 陽性者は75名で、陽性率は33.9%(1/31時点)であった。1月の自費PCR検査数は74名、うち陽性者5名で陽性率は6.7%(1/31時点)であった。


 結局、9月~1月の行政検査総数464名、うち陽性者116名で陽性率は25%、9月~1月の自費PCR検査総数125名、陽性者8名で陽性率6.4%であった。行政検査の陽性率は、25~34%と国の発表よりも3倍程度高率である。無症状の方に行った自費検査の陽性率でも6%程度あるので、当院の周辺はかなり市中感染になっていると言えるだろう。

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 一方、4~9月は、保健所でPCR検査を行っていたが、陽性者は50名だった。これらの数字を合計すると結局、166名のコロナ患者さんの診断と治療に関与してきたことになる。約100名の陽性患者さんに私の携帯電話を教えてメールや通話でメンタル支援も行ってきた。患者宅への往診は35人、陽性者のドライブスルー診療は約30人で延べ100回位であった。


 肺のCTで検出されたコロナ肺炎は、259名いた。従って「PCR陰性コロナ肺炎」は、少なくとも259-199=60人ほどいてこの方々のフォローも、オンラインやドライブスルー診療で行ってきた。保健所は発症から10日経過したらフォローをやめるが、コロナ肺炎の自宅療養は思いのほか長期間に及び1~2ケ月かかる人もいる。ちなみにこの国は「PCR陰性のコロナ感染者はいない」という建付けだが、実際はかなりいる。またコロナ肺炎を疑い肺のCTを撮影した人は550名ほどいて、5割の患者さんにコロナ肺炎を認めたことも書いておきたい。


 感染者が激減した現在は、「コロナ後遺症外来」を行っている。全身倦怠感や筋肉痛などの身体症状だけでなく、不眠やPTSDなどの多彩な精神症状にも対応している。結局、かかりつけ医におけるコロナ診療は、診断、重症度評価、トリアージ、治療、自宅療養支援、メンタルケアなどまさに総合診療である。当然であるが100名の職員のメンタルケアも重要である。看護師の協力なしでは不可能だ。


これらを外来診療と在宅医療と並行して行うのは大変だ。できれば、市役所や体育館の駐車場にいくつかテントを張り「診断」「治療」「ワクチン接種」などのコロナ診療を医療機関の外でやってはどうか。そこにかかりつけ医が「出務」するという体制のほうが機能的である。当たり前だが、通常診療を守ることも私たちの役割である。


特養や老健の感染者は誰が診る?

 2月9日現在、第三波は鎮静化しつつあるが、高齢者の致死率は上昇している。今後、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)におけるクラスターの発生を強く懸念している。ウイルスから見たらこれらの場ほど、勢力拡大に効率のいい場所はないからだ。しかし特養や老健は、そもそも医療がほぼ無い介護施設である。そこで陽性者が出た時、いったい誰が診断・治療するべきなのだろうか。嘱託医や管理医師は高齢であることが多い。


 80~90代の管理医師は自身の感染を恐れ診療しないことは批難できないだろう。 何らかの理由で嘱託医や管理医師がコロナ関連の診療ができない場合は、地域の在宅医に応援を要請しても構わないと考える。たとえば筆者が所属する尼崎市医師会などの医師会は保健所と協力して往診医の登録システムを作り、クラスターが発生した特養に往診に入り看取りまで行っている。やむを得ず特養や老健でお看取りとなる場合においても、医師や看護師の介入や点滴や酸素が無いと倫理的に問題があるのではないか。


しかしこれらの医療は感染症法の枠外なので、保険診療として末期がんと同様に扱うしかない。HOTの適応はCOPDと慢性心不全に限られているがコロナ感染も認めるとか、自己負担を免除するなどの特定措置が必要と考える。また感染症病棟で一命をとりとめたものの寝たきりになった沢山の高齢者が引き受ける施設や在宅医は少ない。


もし地域の医師会員や在宅医が一人ずつでも診ることになれば、全国で1万床の病床が空くことになり、病床逼迫による緊急事態宣言は前倒しできるのではないか。


次のパンデミックに備える  


なぜ当院の屋外にテントがあるのか?とよく聞かれる。実は2009年の新型インフル騒動の時に次のパンデミックに備えるべくテントを10年以上、温存させてきた。今回、発熱外来、検査待機、投薬と会計待ちと3つのテントが活躍している。またクリニックの裏にある30台程度の駐車場もドライブスルー検査や診療にフル活用している。 当院では用いていないが、一人用のサウナの様な座って撮れる簡易・移動型の胸部CTも テントの下に設置可能である。


さらに今後予想されるワクチン接種も屋外で行うことを想定している。感染症診療は可能なら空気が流れる「屋外」での対応が理想的だ。しかしビル診などでは屋外診療は無理である。しかし近隣の駐車場や空き地を利用を時限的に使えないものか。保健所に届ければ臨時の診察場として使えるような法的検討も急ぐべきだ。  


パンデミックを「災害」と捉えるならば、平時から「備える」ことが大切であろう。マスクやPPE、救急処置具などある程度の備蓄と定期的に訓練をしておくべきだ。また26年前の阪神暖震災で学んだように「ことらから出向く医療」、つまり「往診対応」についてもシミレーションすべきである。


当院では感染者はドライブスルーと「軒先往診」で対応してきた。その際にゴルフで風を読むように医療者は風上に立つことも大切だ。 感染爆発時には必ず自宅待機者が増加する。彼らの管理やメンタル支援は、地域の「かかりつけ医」の役割だと思いやってきた。当院のコロナ診療の様子は最近、MBSの「ミント」とTBSの「報道特集」で紹介された。興味のある先生は、QRコードでご覧いただきたい。(本誌)



PS)

コロナチャンネル #311


日本一カッコいい後期高齢者に出会った!  →こちら


宇崎さんは、実は、昨日2月23日が75歳のお誕生日だった。

こんな後期高齢者になりたいけど、生まれ変わっても、なれない。


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この記事へのコメント

米国だとNYのセントラルパークにテントを張って即席病棟を作って対応していますね。
日本では一部の診療所がやる発熱外来も、入院管理もほとんど屋内でやっています。なぜいつまでたっても感染リスクの高い換気効率の悪い屋内での診療をずっとしているのか?私には理解できません。臨機応変的な対応ができていない気がします。
原則的に発熱外来はすべて屋外でやるべきです。運動会などで使うテントなどどこにでもあるはずです。
各地域で自治体がモノを準備して医師会がヒトを準備すればできるはずなのに1年たってもずっとやれませんでしたね。
医師会員(高齢者が多い)の感染リスクを懸念してあえてやらなかったのかもしれません。
優先的にワクチンが接種されるのですから、ワクチン接種後はぜひやってほしいですね。
しかし活動性の低い高齢者に関してはやはり往診を基本にすべきだと思いますし、地域の医師・看護師全員で往診組織を組んで、分担して往診してほしいと思います。やるべきことは採血・PCR・抗原検査・デキサメサゾン投与で、専門性は問われないので診療科を問わず、全員出動でやるべき仕事ではないかと思います。それが災害医療だと思います。

Posted by マッドネス at 2021年02月24日 11:00 | 返信

長尾先生、確かに宇崎竜童さんの様にはならないのは誰もが認める(笑)
でも、「痛くない死に方」の公式ガイドブックを読んでいて、P106~P114は

長尾先生でないと書けない

と、思いました

「痛くない死に方」と「けったいな町医者」は
P122~P127に書かれている映画に携わった方々の名前を見ながら、多くの方に支えられて出来た映画なのだと思いました
映画は一人で作製出来ないのは当たり前の事だけどあえて、強く感じています

それと二本ともに共通して言えるのは

「患者さんとそれを支えてきた家族の方々の映画」
考えたら名前は公表されていないので「名もなきの主人公たち」になるのかな(^^)v


高橋伴明監督さんの川柳はどれも笑えるものばかりで、映画館で聴き洩らしたものを本で読んで一人で笑っています
でも、本当にその通りだと思う

「死に水も 人目盗んで 酒にして」

私はお酒は飲みませんがこの川柳が一番好きです

長尾先生はもしかして、マゾ
だって、叩かれるのが趣味(^^♪
でも、「日本医師会は開業医はコロナを診ないことが基本」てさぁ
少し複雑
先生が「過労死するする」とブログに愚痴りながら、
踏ん張ってきたのはなんなの?

「コロナで死なせない」と医師免許剥奪覚悟で、人の命を救ってきた意味はなんなの?

「医師」とはいったいなんなの?

Posted by ナオミ at 2021年02月25日 06:26 | 返信

「痛くない死に方」の出演者の方たちと会食できた良かったですね。
最高の異業種交流ですね。
演劇って、一種の精神的治療法でもあると、伺いました。
シャーロックホームズも、乞食のお爺さんになって内偵していました。
乞食になったり、王侯貴族になったり、男性になったり、女性になったり気分転換になりますね。
ビビアン.リーは、欲望というなの電車というお芝居の中で、妹の夫とセックスをしてしまって気が狂う元教師の役をして本当に気が狂ってしまったと聞きました。怖いですね。

Posted by にゃんにゃん at 2021年02月26日 08:35 | 返信

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