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町医者がコロナにできること

2021年03月09日(火)

今夜の最後はコロナだったのでまだ安心できない。

町医者でもコロナの診断・治療・在宅支援は可能。

そう日本医事新報2月号の連載に書いた。→こちら

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日本医事新報2021年2月号  

町医者がコロナにできること       →こちら



「自宅放置者」のケア  


 二度目の緊急事態宣言が発出された頃から、感染者数は明かに減少傾向に転じた。少しホッとした今、新型コロナ対応において当院における診療を振りかえり、町医者にできることを考えてみたい。 4月の第一波から屋外のテントで発熱・風邪症状を訴える患者さんを1000人以上、診療してきた。9月まではPCR検査を保健所に依頼してきたが、10月からは唾液によるPCR検査が行政検査として可能となった。もちろん抗原検査も適宜、行ってきた。4月から初診時に胸部CTでコロナ肺炎を認、酸素飽和度の低下や炎症反応の強い人には、屋外でデキサゾン注射を行ってきた。


 第三波において、かかりつけの患者さんだけでなく保健所から紹介される患者が急増しテント前に行列ができてしまった。年末から感染者数が多すぎて入院もホテル療養もできないため「自宅待機者」を余儀なくされる患者が急増した。自宅待機中に高熱や呼吸苦や不安を訴える人は保健所にいくら電話しても通じなかったという。もし通じたら皆、当院に電話するように言われたという。一時期は電話が鳴りっぱなしであった。発熱外来に加えて初期治療、そして自宅待機者の管理まで行うことになった。オンライン診療やドライブスルー診療だけでなく、携帯番号を教えて24時間対応を行ってきた。

 自宅待機者の未治療死を防ぎたい。ただそれだけで突っ走ってきた。26年前の阪神淡路大震災で「官に期待する前に自分がまず動く」と感じたが、それを実践してきた10ケ月間であった。



10ケ月間のコロナ診療実績


この10ケ月間の当院におけるコロナ診療をふりかえってみたい。以下、検査数と陽性率を示す。1月の行政検査数は唾液PCR210名と抗原検査11名で計221名、うち 陽性者は75名で、陽性率は33.9%(1/31時点)であった。1月の自費PCR検査数は74名、うち陽性者5名で陽性率は6.7%(1/31時点)であった。結局、9月~1月の行政検査総数464名、うち陽性者116名で陽性率は25%、9月~1月の自費PCR検査総数125名、陽性者8名で陽性率6.4%であった。行政検査の陽性率は、25~34%と国の発表よりも3倍程度高率である。無症状の方に行った自費検査の陽性率でも6%程度あるので、当院の周辺はかなり市中感染になっていると言えるだろう。一方、4~9月は、保健所でPCR検査を行っていたが、陽性者は50名だった。これらの数字を合計すると結局、166名のコロナ患者さんの診断と治療に関与してきたことになる。


約100名の陽性患者さんに私の携帯電話を教えてメールや通話でメンタル支援も行ってきた。患者宅への往診は35人、陽性者のドライブスルー診療は約30人で延べ100回位であった。 肺のCTで検出されたコロナ肺炎は、259名いた。従って「PCR陰性コロナ肺炎」は、少なくとも259-199=60人ほどいてこの方々のフォローも、オンラインやドライブスルー診療で行ってきた。保健所は発症から10日経過したらフォローをやめるが、コロナ肺炎の自宅療養は思いのほか長期間に及び1~2ケ月かかる人もいる。ちなみにこの国は「PCR陰性のコロナ感染者はいない」という建付けだが、実際はかなりいる。またコロナ肺炎を疑い肺のCTを撮影した人は550名ほどいて、5割の患者さんにコロナ肺炎を認めたことも書いておきたい。


感染者が激減した現在は、「コロナ後遺症外来」を行っている。全身倦怠感や筋肉痛などの身体症状だけでなく、不眠やPTSDなどの多彩な精神症状にも対応している。結局、かかりつけ医におけるコロナ診療は、診断、重症度評価、トリアージ、治療、自宅療養支援、メンタルケアなどまさに総合診療である。当然であるが100名の職員のメンタルケアも重要である。看護師の協力なしでは不可能だ。 これらを外来診療と在宅医療と並行して行うのは大変だ。できれば、市役所や体育館の駐車場にいくつかテントを張り「診断」「治療」「ワクチン接種」などのコロナ診療を医療機関の外でやってはどうか。そこにかかりつけ医が「出務」するという体制のほうが機能的である。当たり前だが、通常診療を守ることも私たちの役割である。



特養や老健の感染者は誰が診る?  


 2月9日現在、第三波は鎮静化しつつあるが、高齢者の致死率は上昇している。今後、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)におけるクラスターの発生を強く懸念している。ウイルスから見たらこれらの場ほど、勢力拡大に効率のいい場所はないからだ。しかし特養や老健は、そもそも医療がほぼ無い介護施設である。そこで陽性者が出た時、いったい誰が診断・治療するべきなのだろうか。嘱託医や管理医師は高齢であることが多い。80~90代の管理医師は自身の感染を恐れ診療しないことは批難できないだろう。  何らかの理由で嘱託医や管理医師がコロナ関連の診療ができない場合は、地域の在宅医に応援を要請しても構わないと考える。


 たとえば筆者が所属する尼崎市医師会などの医師会は保健所と協力して往診医の登録システムを作り、クラスターが発生した特養に往診に入り看取りまで行っている。やむを得ず特養や老健でお看取りとなる場合においても、医師や看護師の介入や点滴や酸素が無いと倫理的に問題があるのではないか。しかしこれらの医療は感染症法の枠外なので、保険診療として末期がんと同様に扱うしかない。HOTの適応はCOPDと慢性心不全に限られているがコロナ感染も認めるとか、自己負担を免除するなどの特定措置が必要と考える。また感染症病棟で一命をとりとめたものの寝たきりになった沢山の高齢者が引き受ける施設や在宅医は少ない。もし地域の医師会員や在宅医が一人ずつでも診ることになれば、全国で1万床の病床が空くことになり、病床逼迫による緊急事態宣言は前倒しできるのではないか。



次のパンデミックに備える  


 なぜ当院の屋外にテントがあるのか?とよく聞かれる。実は2009年の新型インフル騒動の時に次のパンデミックに備えるべくテントを10年以上、温存させてきた。今回、発熱外来、検査待機、投薬と会計待ちと3つのテントが活躍している。またクリニックの裏にある30台程度の駐車場もドライブスルー検査や診療にフル活用している。 当院では用いていないが、一人用のサウナの様な座って撮れる簡易・移動型の胸部CTも テントの下に設置可能である。さらに今後予想されるワクチン接種も屋外で行うことを想定している。感染症診療は可能なら空気が流れる「屋外」での対応が理想的だ。しかしビル診などでは屋外診療は無理である。しかし近隣の駐車場や空き地を利用を時限的に使えないものか。保健所に届ければ臨時の診察場として使えるような法的検討も急ぐべきだ。  


 パンデミックを「災害」と捉えるならば、平時から「備える」ことが大切であろう。マスクやPPE、救急処置具などある程度の備蓄と定期的に訓練をしておくべきだ。また26年前の阪神暖震災で学んだように「ことらから出向く医療」、つまり「往診対応」についてもシミレーションすべきである。当院では感染者はドライブスルーと「軒先往診」で対応してきた。その際にゴルフで風を読むように医療者は風上に立つことも大切だ。 感染爆発時には必ず自宅待機者が増加する。彼らの管理やメンタル支援は、地域の「かかりつけ医」の役割だと思いやってきた。当院のコロナ診療の様子は最近、MBSの「ミント」とTBSの「報道特集」で紹介された。興味のある先生は、QRコードでご覧いただきたい。    


ーーーーーーーーーーーーーーーー


PS)

コロナチャンネル #324


聖徳太子と、人生会議と、僕のこと。 →こちら



今夜、NHKに2回出た。


210308TV_NHK_Live_Love_ひょうご [4min52sec] →こちら


210308TV NHK 兵庫ニュース845 [4min36sec]  →こちら


NHKが映画の宣伝をやってくれた。

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この記事へのコメント

生きる事は、食べる事。食べる事は、生きる事。
心に刻みます、今YouTubeで「痛くない死に方」の舞台あいさつ初日の様子のを見つけてみていました。

私二つの映画もう一回観に行きます 映画って何回見ても新しい発見がありますから。

昨日のコロナチャンネルも面白かったです。

Posted by 長尾先生大好き。 at 2021年03月09日 07:35 | 返信

映画みました。とても良かったです。
けったいな町医者、の名前通り、ユニークな先生でした。
ありがとうございます。
お身体に気をつけて頑張ってください。

Posted by 塚本 at 2021年03月09日 07:56 | 返信

町医者のコロナ診療参入を阻む最大の壁は「指定感染症・2類指定」ではないでしょうか?
新型コロナウイルスは未だに「生物テロに相応するウイルス」宇宙服装備による診療、屋内診療では退室後15分の消毒などによる医療資源の疲弊と物理的負担。そこまでしても、感染者とそれを診る医療従事者への差別意識・社会的偏見にさらされる。
「感染したら、感染させたらエライことになる」という精神的負担を負いながらの診療を連日続けるのは相当なストレス。
院長が精神的にタフネスだとしてもスタッフがついてこない。もう1つの壁は治療ができない、治療薬がないことで、治療がない病気など誰も診たがらないはずです。イベルメクチンやデキサメサゾンの臨床治験を実地診療で十分行えばいいだけなのですが、誰もやろうとしない。医師会側から厚労省に「2類指定を外せ」「インフルのように我々に最前線診療に参加させろ」という要望は一切ない。1年前と変わらず「みなさん自粛してください」と壊れたテープレコーダーのように繰り返すだけ。これでは医師会(開業医)の信用が失墜するのも無理はないですね。医療不信を増幅するための指定感染症と言っても過言ではないでしょう。

Posted by マッドネス at 2021年03月09日 08:32 | 返信

今日、けったいな町医者の午後の部を見に行きました。終わった後、思い出したんです、私が12歳ごろだったと思うのですが、西宮市に住むようになって47年になりますが、九州の炭鉱町の町医者さんは祖母が亡くなるとき往診に来てくれて、布団の周りに子、孫、などたくさんで、看送りました。祖母も喜んで行ってくれたと思ってます。今時は、私の場合は多分病院かな?

Posted by 足立 榮子 at 2021年03月16日 04:48 | 返信

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