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気が付いたら白衣を着なくなっていた

2021年03月10日(水)

2本の映画に関する僕のインタビュー記事の第二弾が

医師情報サイト「m3」にアップされ、また一位に。

「気が付いたら白衣を着なくなっていた」、のです。

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「気が付いたら白衣を着なくなっていた」

-長尾和宏・長尾クリニック院長に聞く

◆Vol.2 病だけでなく人生をも丸ごと診られる「こんなに楽しい仕事はない」

インタビュー 2021年3月7日 (日)配信岩崎雅子(m3.com編集部)      →こちら


【長尾和宏氏・インタビュー】

Vol.1 尼崎の町医者が映画に「議論のきっかけになれば」

Vol.2 「気が付いたら白衣を着なくなっていた」



──『痛くない死に方』では柄本佑さん演じる河田医師は、患者さんと話す時の姿勢から変化していきます。『けったいな町医者』での先生のフランクな問診の様子も面白いです。  


(柄本)佑さんがうちに来て一緒に在宅現場を回ったので、それを参考にして演じてくれたのでしょう。僕の問診はどぎついですよ。恋愛や離婚から始まり夫婦や子供との関係性、職場の上司の良し悪しまでその人の生活を根ほり葉ほり聞きまくります。


──患者と向き合うこと、コミュニケーションの秘訣はどこにあるのでしょうか。


 映画にも出てきますが、「人間を好きになれ」、かな。もしも人間が嫌いだったら町医者にならない方が良いかも。  医療コミュニケーションの土台は興味や好奇心です。病気だけではなく、人間に対する興味を持てるか。どんな物語があって病気になり、今、自分の前に現れているのか、町医者の問診はそこから始めるべきだと思います。AIツールである程度まで絞れるでしょうが、核心部分に迫る能力こそが「町医者力」なのでは。


──白衣も良い小道具になっています。  


 僕は15年くらい前からでしょうか、気がついたらいつの間にか白衣を着なくなりました。自然と白衣が要らなくなるのが町医者道だと思っています。患者さんも気にしない。友達のように気軽に話しをする時に白衣はどうしても邪魔に感じます。  


 そもそも医者であること自体が患者さんには暴力的だと思います。白衣はその象徴。もちろん職種や清潔を示すなど良い面もありますけれど患者から見たら、怖い。白衣高血圧という言葉が示すように威圧的で権威の象徴でもある。白衣を着た瞬間に上下関係ができるような気がして、申し訳ないような気になります。  


 研修医を在宅現場に連れて行くときは、必ず白衣を脱いでもらい普段着です。国会議員や厚生労働省の方が見学に来ても、スーツを脱ぎネクタイを外してトレーナーかジャージに着替えてもらいます。ただ、当院では僕以外は白衣を着ない医師は少数派で、着る医師のほうが多いです。特に指示はしませんが、過去に「脱げ!」と言っても「脱げません!」と言った医師もいました。


 一方で、20年も30年も在宅をやっている先生の中には自然と白衣を着なくなった人もいるようです。邪魔なんです。不要になるのです。ただ、白衣を着ないと看護師さんに「汚い」とか「いつも同じでみっともない」と嫌がられます。  


 35年前、大学病院勤務の下積み時代、ある病院にアルバイト診察に伺いました。するとランニングシャツにステテコ姿の老人が僕の周囲をウロウロしていました。てっきり掃除のおじさんかと思っていたら、隣で患者を診察し始めた。誰この人?と思っていたら、なんと院長先生だった。でも患者は普通に診察を受けている。そんな不思議な光景に当時は驚いたけど、気づいたら約35年後には、自分がその奇異なじいさんになっていました(笑)。


──『けったいな町医者』の中では、先生が「一人紅白歌合戦」を開催して、在宅患者さんにも来てもらう様子も描かれています。  


 僕は歌が大好きですが、患者さん相手の時は「これは音楽療法なんだ」と苦しい言い訳をしています。映画に描かれた「一人紅白歌合戦」以外にもクリスマス会や花見の会など年に何回か、飲食を交えた非日常の場を作り高齢者を誘い出しています。閉じこもりがちな患者さんとご家族と非日常空間に招き、パチパチ写真を撮る。何枚かを引き延ばしてプレゼントします。1カ月後にはそれが遺影になることも。なんでもいいから外出のきっかけになればという思いで、宴会やフォトセラピーを20年くらい続けています。


 在宅医療の目的は、長生きすることももちろんですが、一日一日を「楽しむ」ことではないでしょうか。楽しむと言っても急には難しいから、まずは僕たちがピエロになってみせる。その一つが「一人紅白」です。「いちびり」(近畿方言でふざけてはしゃぎまわること)と言われても仕方がありません。当たっていますからね(笑)。


「医療=薬」ではいけない。  


 僕は大阪の町医者だからどんな方法でもいいから患者を笑わせてみたい。でも大量の薬で笑顔になるわけがないじゃないですか。「医療=薬」はいけません。特に人生の最終段階にある人に必要な薬とは、緩和ケア薬、下剤、眠剤くらいかな。それよりも満足や納得や安楽の象徴である「笑顔」の方を大切にしたいです。


──「習慣」にアドバイスするのが医療だともおっしゃっています。


 町医者の仕事とは、まずは生活習慣病の本質を見抜くことです。病態はその人によって全く違います。たとえば高血圧や糖尿病を見たら、老化なのか遺伝なのか二次性なのかを考える。ストレス度を詳しく問診し、その原因が家庭環境にあるのか職場環境なのかを見極めます。すると本人が気づいていない行動様式の偏りが見えてくるはずです。  


 食事、運動、睡眠、嗜好、趣味のなにかが偏っていて、その偏りが病気を造る。そんなクセを見つけ出し自力で方向転換できるよう上手くアドバイスする。「ここだけでも直したらグッと良くなるよ」というポイントを見つけるのが町医師の仕事だと思っています。その後は認知行動療法です。 こうしたことをやらないで反射的にガイドラインどおりに薬だけを処方する医療はどうなのかなと思います。病気になるにはそれなりの理由がある。その本質に迫るのが町医者ならではの「問診力」です。


──『痛くない死に方』では河田医師が冒頭、日々続く夜中の往診がきっかけで家庭の危機を迎えています。先生ご自身が休みなく連日の看取り、映画を見ていても、厳しい仕事だなと感じることが多かった。


 まず、国が推し進める在宅医療は制度自体に致命的欠陥があると感じます。1人で24時間365日、真面目に対応したら間違いなく死にます。勤務医なら労働基準監督署に摘発されます。自営業者には労働基準法は適応外ですが、今のような形が良いとは決して思いません。いろんな本にも書いてきましたが、医師の労働問題はまさに「パンドラの箱」です。根は深いです。今は制度上やらざるを得ないから、僕も仕方なくこの形でやっているだけです。だから在宅を美談で語ることには抵抗があります。国は在宅医の労働問題も少しは考えて欲しいです。  


 映画では、在宅医の影の部分を、つまり医者も一人の人間だという部分も描いてもらいました。在宅をやっている先生だったら「こういうことあるよなあ」と共感いただけるだろうし、市民の方にも夜間対応の大変さを少しは知ってもらえたらうれしい。訪問看護師さん達が在宅医の命を守ってくれているから、まだ生きています。


──その上で、町医者、在宅医の魅力とはなんですか。  


 僕の場合は、人の人生を最初から最期まで診られる立場にいられることかな。こんなに面白い仕事はないですよ。長い患者さんでは35年間も診ています。一緒に生きて老いていきます。患者さんに興味を持ち、「この人はいったいどんな人生を歩んできたのだろう」と想像する。たとえ在宅期間が1週間であっても、その間だけでも何冊かの本になるくらいの物語があったりもする。一人一人の物語に寄り添えるのが在宅医療の醍醐味です。ただ、あまり熱心にやりすぎるとしんどいけれど。  


 お看取りの時、僕の場合は家族や親族がいたら「この人の人生はああで、こうで」って10分間くらい人生と病気を振り返りながら、「親孝行をしましたね」とか「最期まで見守ってくれてありがとう」などと話しかけます。そうしたら、家族は泣き笑いになります。死亡診断書を書き終えた後に、誘われて家族と食事や酒をともにすることもあります。その日初めて会う身内も笑顔になるのが在宅看取りですし、一番大切な最期の瞬間に立ち会わせて頂いたことに感謝し、畏敬の念をもって接しています。


──在宅医はどのように訓練を積んでいけば良いのでしょうか。映画の中では先輩の在宅医と共に往診し、学ぶ姿が出てきます。  


 様々な場で経験を重ねるしかないでしょう。僕自身、まだまだ自分は研修医だと思っています。やってもやっても未熟、失敗の連続。でも知らない間に年をとり、自分の子供より若い医師と一緒に在宅患者さんを回り、それなりに教えてはいます。いろんなルートで全国から、海外からも色々な方が見学に来てくれます。逆にうちの医師を他のクリニックで勉強させてもらうことも。僕自身が3カ月ごとに日本中の在宅クリニックを回って色々勉強させてもらうのが目下の夢です。


長尾和宏(ながお・かずひろ)氏 1984年、東京医科大学卒、大阪大学第二内科入局。聖徒病院、大阪大学第二内科、市立芦屋病院内科勤務を経て、1995年尼崎市に長尾クリニックを開業。1999年から医療法人社団裕和会理事長。『「平穏死」10の条件』(ブックマン社)など著書多数。


ーーーーーーーーーーーーーーーー



今夜は、国立認知症大学のZOOM講演だった。

テーマは「特養、老健でのコロナ患者にどう対応するか」


尼崎医師会の原理事と梅村聡参議院議員の2人がゲストだった。

イヤー、皆さんからもいい話を伺い、とっても勉強になった。


そのまま国会中継で流すか、NHKの番組で流して欲しい内容。

ホントはこんな議論をちゃんとやらないといけない、のにねえ。


参加された全国の皆様、お疲れ様でした。

また5月に、ZOOMで、お会いしましょう。



PS)

コロナチャンネル #325


「けったいな町医者」が、尼崎に上陸しました  →こちら



今夜は21時から、Clubhouseで、映画のよもやま話をやります。

Clubhouseは招待者が必要な新しいSNSだけど、2回目の出番だ。


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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

先日もNHKのニュース番組で、長尾先生の活躍が取り上げられてましたね。その前はMBSTVでも。本や映画と違いTVニュースは、日ごろ先生の活動に関心を持っていない多くの人に届くので、いいですね。多くの人に知ってもらうと先生の発信力が高まり、政治や医療界を動かすことにも。益々のご活躍をお祈りしております。

Posted by 陰ながらの応援者。 at 2021年03月10日 11:11 | 返信

医療=薬が最も必要とされるのは「感染症」抗生物質と抗ウイルス薬は人類の多くを救っています。
と同時に、誤嚥性肺炎を繰り返しながら抗生物質で何年も延命している人もいますし、そういう人々には耐性菌が発生します。そういう人たちが複数、病院に長期入院していると院内感染が蔓延してしまいますので、諸刃の剣と言えます。
院内感染の軽減のためにも長期慢性入院患者を1人でも減らして在宅医療に転換したほうがよいでしょう。
労働基準的に言うと、在宅医も病院の勤務医や看護師のように、日勤帯・夜勤帯の交代制や当直・輪番制が望ましいと思いますが
そういうシステムを地域で構築しているという話はあまり聞きません。開業医はそれぞれ個性の強い1匹狼ですから他所の開業医と協力体制を作るのは難しいのでしょうね。強化型診療所はたしか1つのクリニックで3人以上の医者で診るような前提条件になっていますね。他の医者と協調するのがイヤな医者は死にそうでも24時間365日1人でやるしかないのでしょうか?

Posted by マッドネス at 2021年03月10日 06:36 | 返信

長尾先生、ありがとうございました
国立認知症大学に参加させて頂き、素人の私でも、本当に勉強になることばかりでした
また、原理事さんと梅村聡参議院員さんのお話も聞かせて頂きありがとうございました。

ZOOM講演が終わり一番気になったのが

長尾先生のおへそが無くなっていないかどうかです(-_-メ)

素人の私ですら、言葉にならない現実が一杯だった
梅村聡参議院員さんののお話を聞いていて

持っていた鉛筆を折りそうになったのも本当です

「♯326 2週間に一度ずつ変異を・・・」を見ながら、誰一人、コロナに感染していない長尾クリニックのスタッフやご家族の方々は本当に凄い
奇跡に近いと言えばそれまでだけど、かなりの感染予防もなされてると私は思っています
何の努力も無しで無感染でいられるとは思えないからです
本当に頭が下がります

医師の着ている「白衣」て、いったいなんなんだろう
「白衣」を着ている医師に診てもらえれば、それだけで安心感を得られる方もあるみたいです
偉い先生に診てもらえればそれで良い・・・
病気の症状が落ち着くならそれもありかも知れないけど、私は無理です
大きい病院の先生より、私は長尾先生の様な「町医者」が大好きです
カルテの数字だけでなく、ちゃんと「人間」を観て欲しい
大きい病院では修行中の医師の方が多いと思うし、実際、母ちゃんが倒れて最初の病院の若い先生は、他の先生から注意を受けて、母ちゃんの治療方法を少し、変えた
母ちゃんの最初の担当の先生の悪口ではないけど、自分の最初の診たてと、検査の結果が如何やら違っていたので、私から逃げまくっていたような・・・

Posted by ナオミ at 2021年03月10日 09:07 | 返信

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