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震災もパンデミックも「出向く医療」で

2021年03月23日(火)

日本医事新報3月号の連載は、「震災も

パンデミックも出向く医療で」で書いた。

全国の在宅医が各々の地域で頑張ってる。

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日本医事新報2021年3月号   

震災もパンデミックも「出向く医療」で     →こちら



東日本大震災から10年  


 東日本大震災から10年が経過した。2011年4月~5月に被災三県を支援をしながら巡って以来、東北の人達との交流が現在も続いている。先日も石巻の知人から連絡を頂いたばかりであるが、報道されているように復興が遅れている。筆者は阪神淡路大震災の被災者でもある。その年に病院を飛び出し幼少時に住んでいた尼崎で開業した。阪神は10年目にはかなり復興していたが、東北の復興は阪神の時よりも単に遅いだけでなく明かに異質である。特に福島は原発の影響で人口減少が著しく、復興の前に人口減少対策という難題が横たわる。日本国の課題を東北が先がけて受けている。その意味でも東北復興は日本復興の象徴であると受け止めるべきだ。  


 10年目を迎えた今、頭に浮かぶ光景といえば、気仙沼市面瀬中学の校庭に建っていた仮設住宅の方々、大島で孤軍奮闘していた訪問看護師、ボランテイアセンターで知り合った医療者たちの顔である。大島では認知症の母親が大声を出すので避難所に入れず車内に寝泊まりしていた親子がいたが、あれからどうなったのだろう。コロナ禍でも認知症の人が置き去りにされている。そのうち在宅医が来ると言っていたけど、本当のところ被災三県の出前医療はどうなっているのか。コロナが明けたらまた交流に行きたい。


2本の映画はどこも満員


 一方、筆者が関わった2本の映画「痛くない死に方」とドキュメンタリー映画「けったいな町医者」が2月20日に東京から順次全国公開されている。両者とも在宅医療と看取りがテーマの静かな映画である。各地での公開初日に舞台挨拶をさせて頂いたが、東京、名古屋、京都、大阪、尼崎、神戸の映画館はすべて満席。コロナ禍にも関わらず順調なスタートを切った。今、全国約80館でロードショー中であるが評判次第で上映館はさらに増えそうだ。舞台挨拶のあと映画館の出口で立っていると、多くの医師や看護師に観て頂いていたことに気が付く。


 銀座の映画館では東京都のある医師会長が1週間空けてご夫婦で2本とも観て頂き感激した。映画のパンフレット本へのサインを同業者から求められた時、本当に嬉しい。 突っ込みどころ満載の問題作なので各方面からの相当な反発を覚悟していたが、今のところクレームの類は皆無である。評価も現時点では2本揃って高評価だ。それよりも多くの病院勤務医にも観て頂いていることが励みになる。この機会に「出向く医療」の現実を知ってもらえることが何よりも嬉しい。 一方、在宅医からは「へー、長尾先生は心臓マッサージを片手でやるんですね」とか「本に書いてあるのと現実は真反対ですね」といった愛情たっぷりの野次をバンバン飛ばしてくれる。


出向く医療  

・ 

 在宅医療はこちらから出かかる医療だ。一方、災害医療も出かける医療である。困っている人がいればこちらから「出向く」のは自然な行為だ。そう考えると映画も災害支援も「出向く」ことが共通のキーワードとなる。困っている人に「寄り添う」ことも共通である。まあ出向く行為自体が半分、寄り添っているようなものだ。だから在宅医療は患者さんの距離感がものすごく近い。今春、市民だけでなく病院勤務医や介護施設関係者に在宅医療や尊厳死を知って頂くことが最大の収穫である。  


 僕のクリニックは1階が外来部門で2階が在宅医療ステーションになっている。両者のウエイトは半々で、医師は1階と2階を一日に何往復もする。その結果、出迎えることと出かけることの心理的な垣根がなくなってくる。だから「発熱対応」も「ドライブスルー診療」も「訪問診療」も特に拘りがない。気が付いたら、通常診療の合間にやってきた「発熱外来」で200人ものコロナ患者さんに関わっただけのことだ。そういえば全国的にコロナを診ている開業医の多くは普段から在宅医療に熱心である。万一、第4波が来たら、出向く医療が病院の防波堤になるべきだろう。


 パンデミックも「災害」と捉えるのであれば、出向くことに特別な意味などないことに気が付く。本来、医療は、「診療の場」を問わないものだ。たまたま診察室であったり、テントであったり、駐車場であったり、仮設住宅であったり、居宅であったりするだけで本質はなにも変わらないと思う。だから「在宅医療」とわざわざ「在宅」という2文字を頭につけることが気に障る。しかし26年間の阪神大震災で目覚めて、10年前の東日本大震災で自らの意思で動くことができ、今回のパンデミックでは堂々と「出向く」ことができた。半世紀かけて「出向く」医療を学んできたことになる。


次号で本連載も10周年


 僕の終末期医療に関する著書の一節がいくつかの医学部入試の小論文の課題に使われるようになったのは数年前からである。予備校の医学部受験対策でも「長尾の本を読んでおけ」と言われているそうだ。医師を目指す若者の適性を知るために僕の著作が使われていることを誇りに思う。そういえば昨年の医師国家試験も終末期医療や在宅医療関連で数題出題されていた。 以下は単なる妄想だけど、同じように2本の映画を観てその感想文を書いてもらえたらさらに嬉しい。さらに2本の映画が研修医や終末期医療の教育の教材になれたら、という欲が湧いてきた。それくらい2本の映画には僕の魂が詰まっている。


 シネマ(映画)を使う教育を「シネ・エデユケーション」と呼ぶらしい。「死ね」ではない(笑)。若い医者や医学生と「長尾先生、このシーンはオカシイと思うけど!」など、映画を肴に本音の議論ができたら最高だ。ちなみに「痛くない死に方」は当分の間、DVD化の予定はないそうだ。またドキュメンタリー映画「けったいな町医者」は患者さんの個人情報のためDVD化ができない。だからこの春から夏にかけて全国ロードショウーやその後の自主上映会などで観て頂くしかない。2本をご評価頂いた先生方には是非、学生や後進に2本を観ることを勧めて頂ければ幸いだ。無駄な台詞がひとつもないので、できれば映画館で集中して観て頂きたい。高橋伴明監督作の約20の川柳が身に染みる。  


僕のライフワークは「町医者道」


 この連載のタイトルも「町医者で行こう!」である。町医者になりたくて医者になった。今、日本は超高齢化社会を迎え、国は「総合医」、日本医学会は「プライマリケア医」、在宅医療の学会は「在宅医」、日本医師会は「かかりつけ医」という言葉を使っているが、どこがどう違うのか知らない。しかし僕的には「町医者」という言葉が一番しっくりくる。「なんでも屋」であり、オールラウンドプレーヤーでもある医者を目指すのは容易ではない。しかし高齢者が最後に頼るのは看取りまで寄り添ってくれる身近な「町医者」ではないだろうか。1500人以上を看取ってきた今、そう思う。


 ちなみに、本連載がスタートしたのは東日本大震災の直後の2011年4月23日号である。そしてなんと次回で12回X10年=120回目を迎える予定だ。日本医事新報創刊100周年という記念すべき年の春に僕の連載は10周年を迎える。伝統と権威ある医学誌に10年間、1回も欠かさず好きなことを書かせて頂いていることに日本医事新報社には感謝しかない。今後とも尼崎の「けったいな町医者」を宜しくお願い申し上げます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



日本医事新報は、医療界で最も権威ある雑誌である。

なにせ100年も続いているのだから歴史がスゴイ。


この格式高い医学誌に連載の依頼が舞い込んだのは10年前。

そう、たしか東日本大震災の直後だった、と記憶している。


この記事は、第119回目であるが、興味がある人には

時間がかかるが、過去の連載記事を読んで欲しいなあ。→こちら


次回が120回目の連載になる。

ピッタリ、10年間も連載した。



昨日「けったいな町医者」の毛利監督のネット記事があった。→こちら

へー、っていう感じのことがいろいろ書いてあり、興味深い。


今日も秒刻みで動いた。

またお看取りもあった。


「長尾先生は老衰ばっかり診ている」と公の場で言う緩和ケア医もいるが、

なんのなんの、特に今年は自分より若い30,40,50代の看取りが多い。


緩和ケア専門医には、町医者が緩和ケアをして自宅で看取ることは

「不都合な真実」のようだけど、若い人でも100%看取っている。


あの映画は僕の日常の0.01%くらい。

99.99%は、全くの別世界、である。



PS)

コロナチャンネル #338


名ばかり「緊急事態宣言」はもういらない!  →こちら



首都圏の緊急事態宣言が解除された。(ようだ)

当院は真逆で、今日からフンドシを締め直して、発熱外来をやっている。

第四波がメインで、これまでは予行演習であった、という可能性がある。

子供からの家庭内感染例が増えているようだけど変異株を警戒している。



3月27日の第七芸術劇場のロングトークショーは、現時点で残席4。→こちら

本日中に満席になると思うので、希望者は急いで申し込んでね。



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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

「出向く医療」
そうですよね…よく考えたら、待ってるって、めっちゃんこ受け身だわ〜。
お代官さまぁ〜って感じですね。
「出向く看護」がんばります。

Posted by 宮ちゃん at 2021年03月23日 10:34 | 返信

今日、けったいな町医者を観に行ってきました。
約30年前に祖母を、その次に母を亡くし次は父。病院も介護もこの30年で随分とかわり自宅での介護も出来るようになってきたと感じていますが、先生のように在宅での看とりをしてもらえる所はまだ少数派。
昔のように、自宅で家族に見守られていく、本人に希望を聞いてあげられる、それが普通になって欲しいと思いました。
この映画が社会に投げかけるものを、ひとりでも多くの人にうけとめて考えて欲しい❗
わたしも幸せな最後を迎えられるように、まずはリビングウイルです。

Posted by うる吉 at 2021年03月25日 05:56 | 返信

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