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3ケ月ぶりの生存確認に涙

2021年07月23日(金)

市民の皆さんは信じられないかもしれないが、

保健所は感染者の情報を我々に一切教えない。

だから患者さんと直接話さないと生死が不明。

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当院ではこれまで400人以上(おそらく450人位)の

コロナ陽性者を診断して、一部には治療もしてきた。


陽性が判明したら、私たちはすぐに保健所に

「患者発生届を」書いてFAXしないといけない。


もしこれをしなかったら医師法違反になる。

だから、100%、保健所に報告してきた。


しかし、それが最後で、その後の消息は私たちは全く知らない。


僕自身が関わった患者さんには自分自身の携帯電話番号を教えてきた。

だからメールのやりとりで軽快や退院などの経過を知ることができる。



自宅療養者からのSOSを受けて往診したら「抜け殻」だったことが何度かあった。

友人か家族か愛人宅に移動したのか、はたまたどこかの病院に入院したのか??


保健所に電話して陽性者の消息を聞いても、

「個人情報なので一切教えられません」だ。



僕達は、保健所に「医療情報」をお知らせするのだが、

保健所から医療機関には「個人情報だから」と、一蹴。


要は、保健所と医療機関は「一方通行」のまま1年半が経過した。

こちらは「連携」したくても、あちらは「個人情報だから」だけ。


僕自身が知っている限り、当院で陽性判定をした約450人のうち、

僕自身が診たり携帯で診療した患者さんの死亡例は、ほぼ、ゼロ。


正確に言うと、他の医師が診て僕が一切関与していない陽性者で

1)90代の感染者が、翌朝に自宅で亡くなっていた事例

2)どこかの病院に入院したが入院先で亡くなっていた事例、の

少なくとも2例が亡くなっていることは確認できている。


自宅療養中や施設療養中に僕自身が医療を提供した約200~300人

のうちで、亡くなった(当院が死亡診断書を書いた)例はゼロである。




とはいえ、第4波の混乱の中で「あの人はどうなったのかな?」

とずっと気になっていた2人の消息が、先週と今週に判明した。



1)70歳代 初診時SpO2=60%と重症呼吸不全例

  自宅でステロイドパルス療法で命をつないでいたら8日目に入院できた。

  病院で数回PCRをするも全部陰性だけど、コロナ病棟に入り、回復して

  酸素を吸いながら退院して、当院の在宅患者さんになった。

  3ケ月ぶりに涙のご対面。


2)60歳代 初診時SpO2=60%の重症呼吸不全例

  自宅でステロイドパルス療法を行っていたが、6日目に身内の方が

  タクシーで病院に運び、ワイワイ言ったら、入院できたと聞いた。

  この方も、病院で11回PCR検査するもすべて陰性だったとのこと。

  特発性間質性肺炎の急性増悪が最終診断で、酸素を吸っていると。

  まだ入院中(転院後)であるが、生きていると今週、身内が来院。

  まだ会っていないけども、生存確認ができて、涙がこぼれた。



2例目は切ない。


病院の医療費は、コロナでは無かったので、100数十万円かかったと。

当院の在宅医療の医療費は全額公費で請求して、そのままになっている。

しかし当院が保健所から怒られるのではないかと身内は心配してくれた。



コロナだと医療費はゼロ。


しかし、限りなくコロナを疑って検査を10回以上してコロナ病棟に

入院しても最終的に非コロナと診断されたら医療費100万円単位に。


1)も、入院後に数回PCR陰性だったが、コロナ病棟に入院した。

結局、コロナによる器質化肺炎と診断されたので、すべて公費に。


2例とも、入院後の消息がずっと気になっていた。

連絡が無いのので「もしかしたら」と案じていた。


2人とも初診日は4月20日なので、3ケ月も経過してはじめて

本人や身内から直接聞いて、生存確認ができるのが実情だ。


保健所に聞いても、「個人情報だから」で教えてくれないし、

まして2例とも「コロナじゃないから」と門前払いにあうだけ。



まあいい。


とにかく、第4波で在宅医療を提供した最重症の患者2人とも

入院後も死なずに生きていることを知り、思わず涙が溢れた。



僕自身は、この1年半、「僕が関わった限りは、絶対に死なせへん」と思い

ながら頑張ってきたけど本当に一人も死んでいないことが確認できた今週。




医者になって人の命を救うことは、実はそんなに多くはない。

救うどころか沢山殺しているような医者もいるのが現実、だ。



コロナ禍のなか、僕が救ったと確実言える命は、少なくとも2人はいる。

この2人は僕と出会っていなかったら間違いなく亡くなっていたと思う。



それだけでも、医者になって良かった、と思う。



大昔、救急医だった時、死亡到着を後遺症無く生き返らせた人が数人いた。

ひと昔、尼崎市の夜間診療所で90分間心肺停止を後遺症無く生き返らせた。


今回のコロナ禍で、それ以来、失われた命を救った、と実感した。

ということは、医者になって37年間で救った命は10人くらいかな。


たった10人?


そう思う人がいるかもしれない。

でも、一人も救ったことがない医者のほうが多いのでは、と思う。


だから10人も救えば、僕が医者になった価値は十分ある。

自分を誉めるわけではないが、今夜だけは自慢させてね。



PS)

コロナチャンネル #439_


開業医と保健所の連携 ~読売新聞がやっと記事にしてくれた!  →こちら



ソフトボールにサッカー、興奮したね。

やっぱ、勝利は嬉しいね。始まったね。



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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

おはようございます、せんせい。蝉が元気良く鳴いています。今日の替え歌、面白かったです、キョロキョロしていましたね👀
元夫の母親が介護の仕事をしていました、よく言っていたのが「あまり大きな病院に行かない方が良い」・・練習台にされる。とか。
昨年今の街に引っ越しをしてきて、かかりつけ医を探しました。ドクターコトーの様な。娘もたまに行くコープおおかさ病院にしました、ここでは血圧のお薬だけですが担当医は漢方が嫌いだと言うんですよ、信頼できるまで時間がかかる私です。長尾クリニックに行きたいなぁ~。100万円の支払いは出世払いでお願いします。「身内は心配してくれた。」奥様の事でしょうか?( ´艸`)。開会式は感動モノばかりですが今年のはどんなのでしょう。差別やいじめ、どんな風に育ったらそんなことが出来るのでしょうか?信じられません。

Posted by 長尾先生大好き。 at 2021年07月23日 09:02 | 返信

「3ケ月ぶりの生存確認に涙」拝読いたしました。長尾先生の「保健所」への憤りは本当に私も同感しております。現行の「感染症法」等は、私の見る限り、「開業医」と「保健所」「都道府県」との連携については全く規定がなく、現実の診療・治療に最前線であたる開業医の方々の「権利」については配慮が欠けていると私は思います。ただ、根拠になるのかは分かりませんが、「医師法」の第一章総則第一条に「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定されています。この「医師法」総則の趣旨から、最初に患者を診断して、「保健所」に届け出をした医師には、公衆衛生の向上のため、その患者の方を「保健所」がどのような措置をしたのか、どこに入院し、どのような状態なのか知る「義務と権利」があると私は考えます。その情報を得る事により、最初に診断を行った医師の判断と経験がその医師に蓄積され次の診察に生かされて、更なる公衆衛生の向上及び増進が成されて行くのではないでしょうか。「保健所」が「個人情報」を理由に最初に診断した診断した医師に患者の情報を伝えない事は、「保健所」の存立目的にも反する行為ではないかと私は考えます。「保健所」がどのような根拠で、長尾先生に患者の状態を知らせないのか、もう既にお尋ねしているかもしれませんが、一度法的根拠を「保健師」の方にお尋ねしては如何でしょうか。「保健所」と「開業医」の連携が、「保健所」及び「開業医」の「権利と義務」として法的に位置付けられ、全国的な動きへと進展する事を私は強く望んでいます。
偉そうなことばかり書き連ねてしまいましたが、ご容赦下さい。
危険な暑さが連続しています。長尾先生、スタッフの方々、お身体に気を付けてください。

Posted by 洋ちゃん at 2021年07月23日 11:58 | 返信

あっという間に週末です。長尾先生、今週もお疲れ様です。

「個人情報保護」の一言で、自分自身が感染して入院や
入所した時の保健所の対応を想像すると、心身共に
参っている中、世の中から隔絶してしまいそうで、怖く
なりました。

同じ個人情報保護の問題では、非常災害時の避難者支援
の場合に似ているように感じました。
非常災害時は、本人の承諾があれば、避難者の情報は
しかるべき地域の支援団体と共有することが可能に
なってきていると感じています。

長尾先生がいつも仰っている地域包括ケアの視点から
言えば、新型コロナ感染症の場合は、保健所と地域の
医師会が連携し、名簿を共有することで、入院や施設へ
の移動から、退院、退所後の患者の支援がシームレス
で行われるのではないかと考えますが、大人の事情が
分かっていないと言われてしまうでしょうか。

一市民としては、患者の生活を思って、関係機関が垣根
を取り払った対応とってもらえることを望みたいと思い
ました。

Posted by yn at 2021年07月23日 12:38 | 返信

長尾先生、初めてコメントさせて頂きます。
先生のなさっているお仕事は、患者に真正面から向き合い、心から治してあげたいと願うお医者様としてあるべき姿と思います。本当にありがとうございます。私は、昨年2月にコロナ感染が爆発的に広がったヨーロッパの地区の街に住み、ずっとこちらの様子を見てきました。先生のビデオもブログも読ませていただいて、先生のおっしゃることは全く正論であり、的を得ていると実感しています。行政とマスコミの向いている方向は現場とは全く別の方向のように見えます。多くの治療法が現場で言われてきたにも関わらず、効果のある薬の名前さえ出せない奇妙な状況、その逆境でも、影には早期治療につとめ、先生と類似の治療法(早期の抗炎症治療)で、多くの何百人という患者さんを救ってきたお医者様も世界各国にいらっしゃるのが救いです。一般に正式な治療プロトコールと言われているものは、患者を治すより医者を裁判から救うためのものだという話も聞きました。いつからこんなひどいことになったのでしょう。。。それにしても、先生の替え歌のセンスの良さ、思わず吹き出してしまう歌詞は、どんな薬よりも免疫を上げる効果があると思います。これからもずっと応援しています。毎日楽しみにしています。素晴らしいです!!!

Posted by Noriko at 2021年07月23日 04:57 | 返信

長尾先生
毎日ありがとうございます。
本当に、コロナ騒ぎ、ワクチン騒ぎ、炎天下のマスク。
無観客のオリンピック。
相変わらずの2類波指定で放置。
言葉がありません。
長尾先生の、ブログとコロナチャンネルを見ることで
息ができる、現実がわかると、日々祈る思いで拝読、拝聴しています。
目の前の生活を大切にすることしかできませんが、
しぶとく、粘って生き抜くしかないと思っています。
猛暑の日々が続きますが、くれぐれもご自愛ください。
クリニックのスタッフの皆様も暑さ疲れの出ませんようにお祈り申し上げます。

Posted by sue at 2021年07月23日 05:18 | 返信

自分が元気になったとお医者さんに報告すれば喜んで頂けますね。
私は、母が死んだことを、一年経った頃「喪中につき」で西宮今津の協立病院の三宅裕治先生に出させて頂きました、「アルツハイマーではないと言われて、母が狂おしいほど喜んだこと」など。お返事もいただきました。
母に「肺炎球菌ワクチン」を打ってくださったお医者さんにも亡くなったご挨拶を申し上げました。
最近平成8年生の日産マーチを車検と修理してくれた自動車修理工場にもお礼状を出そうと思いながらまだ出していません。
はがきの値段がコロコロ上がって今いくらか分からないからです。
お礼を言わなければいけない人々にもだしていない。
そろそろ、このままあの世に行ってしまうのだなあと思います。

Posted by にゃんにゃん at 2021年07月23日 06:51 | 返信

はじめまして、FB友達のIZUMI Tagai さんが、おすすめの先生でしたのでFBリクエストしたいのですが・・・
シニア世代の看護師です。現在、ワクチン接種会場におります。早く終息させたいのですが、こちらも医療従事者と政治家達との折り合いがいかないようで、そろそろ、ロックダウン同然の策がなされるようです。
宜しくお願いします。

Posted by 渡邉美智枝 at 2021年08月21日 03:28 | 返信

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