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生病老死に寄り添う薬剤師たち
―第1回在宅療養支援薬局研究会の衝撃―
2010年01月23日(土)
今日はとても楽しい1日でした。午後は世話人を務める第13回尼崎肝疾患懇話会で「インターフェロン治療期間中にbreakthroughを認めたC型慢性肝炎患者の1例」で講演しました。インターフェロン治療中にインターフェロンに対する中和抗体が出来てしまう症例が結構あるようです。インターフェロンの種類によって抗体発現率に大きな差があります。自験例に文献的考察を加えて発表しました。速攻で大阪に移動して第1回在宅療養支援薬局研究会でも講演しました。本会は「梅村聡議員を囲む会」ということで梅村議員が「永田町から見た医療」というメイン講演をされました。在宅医療で有名な鹿児島の中野一司先生も講演されました。私は、「町医者からかかりつけ薬剤師に期待すること」という演題で30分間、結構辛口のお話をさせて頂きました。
薬剤師さんは6年制教育になりましたが、延長された2年間の教育の意義についてまだ明確になっていないようです。全国から集まった非常に志の高い薬剤師さん、医師、歯科医師、介護福祉士らで熱心な意見が交わされました。薬学の歴史、薬学教育現場の悩みなど、懇親会での議論がそのままシンポジウムになる位、実のある懇親会でした。
私は、正直、これまで薬剤師さんにあまり興味がありませんでした。患者さんに不要な副作用話をしてパニック発作を起こさせたりで、「薬剤師なんていない方がいい」とさえ思った時期もありました。しかし、昨年11月の阪神ホームホスピスを考える会の懇親会で初めてお会いした一人の薬剤師さんに「私も在宅医療をしたい」と言われました。私は「やめてくれ。ややこしいだけや」と言いました。
患者さんの家とは言え、他人が家に上がり込むことは実は大変なことです。毎日、気軽に上がり込んでいますが、心の中では大きな壁を乗り越えさせて頂いていることに感謝しながら足を踏み入れています。多職種連携と言いますが、実際に10人もの人が家に入ることは容易ではありません。多いと患者さんもご家族も必ず混乱します。実習生も1度に2名までと制限しています。入る人数は少なければ少ないほどいいのです。そして信頼を得ながら少しずつ人数が増えていく。そんなデリケートな世界だと認識しています。
だから「薬剤師なんて論外」と即答しました。それまで「生病老死に寄りそう薬剤師なんているはずない」と思っていたからです。ところがその薬剤師さんは「先生、今言ったことを是非講演してください」と言われました。その方が狭間紀代さんという今日の会のトップの方でした。ひょんなことから、今日のいいご縁を頂きました。
薬剤師さんの仕事は卒後3年で頭打ちになるそうです。調剤薬局で機械のように薬を出しているだけでは、勿体ないし生き残れない時代になりました。患者さんの体に触れて生病老死に寄り添う薬剤師さんたちが増えることを期待します。まさに多職種連携に対応できる、薬学教育改革が期待されます。
懇親会は、薬剤師さんの悩みについて初めて知ることばかりで、大変貴重な機会でした。全国からご参集された多くの指導者の先生方の熱意に感動しました。先生方のスピーチがとても楽しく、特に印象に残った言葉は狭間研至先生の「自律性を高めながら在宅分野に参入する」、神戸大学の平井みどり先生の日本薬剤師会への過激発言。実はこれは日本医師会も全く同じです。昭和薬科大学の串田一樹先生の学生教育、学校運営への情熱、また、兵庫医療大学の松田暉学長の大学運営での御苦労の様子には大変驚きました。大学教授を退官されても、新たに難易度の高い外科手術に挑戦されていると感じました。
また、新潟の市民調剤薬局の向井勉先生が、懇親会で「薬剤師が自殺予防に一役買えないか?」と話されました。私はこれはとても重要な視点だと思います。大量の安定剤、睡眠薬を手渡しながら、患者さんの本音を聞いている薬剤師さんこそ、患者さんに寄りそえるという側面があると思います。保険点数がつくとなるとまた別のややこしい話になります。しかし公益性から、向井先生のご指摘は正しく、興味のある薬剤師さんはメンタルケアも意識して欲しいと思いました。
昨夜の講演で「薬剤師さんが在宅現場でもっともニーズがあるのは認知症ケアにおける服薬管理だ」と申し上げました。実はスライドでは、その上に「メンタル管理」と書きました。
うつや自殺予防への対応についてもお話したかったのですが、時間の関係で割愛しました。しかし、これは重要です。
3万人もの自殺を食い止めることに薬剤師さんが一役買えたらどんなに素晴らしいでしょう。自殺はいけません。昨年12月に、テレビによく出ている東京女子医大精神科の坂元薫先生の講演を聞いた時にもあらためて思いました。
http://blog.drnagao.com/2009/12/post-256.html
至急の課題として、ジェネリック問題があります。これを患者に奨めない医師にはペナルテイが検討されていると聞きます。ジェネリックの品質が担保されていないのにそれ以前の問題が山積しているのに、こんなことをして大丈夫でしょうか。11月の現場からの医療改革会議で会場から厚労省幹部に「ジェネリックは大丈夫ですか?」と質問しましたが、「大丈夫です」とお役所的回答しか帰ってこず大変不満でした。今後、薬局は、先発とゾロ、両方を用意する必要があり在庫負担が大変です。在宅参入もそうなら、ジェネリック問題も「薬剤師業界のパンドラの箱」だと思います。新しい時代においては、箱を開いていく人が必要です。その作業において、医・薬の連携は必須です。
薬局調剤だけでは生き残れない・・・
薬剤師業界もチェンジの時です。
その先頭を走る本会(在宅療養支援薬局研究会)を応援したいと思います。
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この記事へのコメント
6年制になってから、私立大学薬学部の約半分が定員割れだそうです。
やはり授業料150万円×4年は出せても、6年はちょっと…という経済事情が大きいのでしょうか。
また、薬学部を卒業しても薬剤師の仕事には就かず、製薬会社のMRになる人も多いらしいですね。
MRという仕事は、他の業種や他企業と比べて高収入だとか。
高収入の理由は、、、製薬会社が儲かっているからという説もあれば、MRという職種には「苦痛代」が含まれているという噂も聞きます。な?なにが苦痛なんでしょう。
医療・看護・介護。
投薬・リハビリ・カウンセリング・・・。
高度な知識が必要になってきて、それぞれの専門性が高まっているのでしょうが、どの段階で誰が(どこが)何を担っているのか、私にはその区別すらよくわかりません。
このブログを拝読していても、長尾先生が書いていらっしゃる「一般的にはこう認識されているけど、実は・・・」の記事の、 一般認識の段階でまず1回目「へー」。 そしてさらにそのどんでん返しで2回目「へーー!!」
グリコみたいに、一粒で2度味わっています。(笑)
Posted by カンダタ at 2010年01月24日 09:21 | 返信
長尾先生!
こんばんは
昨日は、ご多忙の所、本当にありがとうございました。
以下、長文レス、すいません。
写真で拝見していた通り、若々しく、エネルギッシュで
パワーがバシバシ伝わってきました。
私は薬剤師たちに、
missionとpassionを大切にしよう!
と呼びかけています。
何となく、薬剤師になったわけでは無いはずです。
その元々の根っこの部分を忘れないこと、
そして、薬剤師免許という国家資格を
持っていることの意味を考えておくことが、
missionとpassionを忘れないことにつながります。
情熱なき医療はあかん、
とも折に触れ、言っています。
その結果、
多くの薬剤師が、去っていきました。
(もちろん、組織運営のまずさも、大いにあったわけですが)
でも、残った(逃げ遅れた?)薬剤師たちは、
はじけてくれました。
そんな薬剤師たちをみて、
ここで働きたい、と誰もがしっている大手の薬局の内定を
蹴って、入職してくれる新人薬剤師が出てきました。
先生のもっていらっしゃった印象は、多くの医師にとって
共通だと思います。
それ故に、私が薬局を継承するといったとき、
同僚、先輩の先生がたは、
「あほちゃうか。なんでやねん」
と思われたようです。
でも、
地域医療を変えるインパクトを持つ集団というのは
そうそうありません。
9000軒の病院、9万軒のクリニック、
20万人たらずの医師で、何とか支えてきている地域医療ですが、
薬局は、
5万2千軒、薬剤師は、薬局に12万5千人、
病院に5万人います。
この巨大な医療リソースが、
調剤というい業務に専念し(もしくは、専念せざるを得ず)
薬局に閉じこもってきたわけです。
これらが大きく動くとき、
地域医療のあり方は大きく変わるのでは、と
妄想に近い思いを描いていたのがもう、8年前になります。
昨日のお出会いを、本当に感謝しております。
どうぞ、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
Posted by 狭間研至 at 2010年01月24日 10:21 | 返信
長尾先生、こんばんは。
薬剤師になりまして45年目にして初めて何かが出来そうな気がしています。
今までのわが国の薬剤師、わが国の医療、は何か変わらなければなりませんね。
先ずは何から?と考えましたら12,5万人の薬局薬剤師が躍動的になりもっとアカデミックになり
医療介護連携において邪魔にならない仕事ぶりを徹底して皆で実行することですね!
今こそ立ち上がらなければなりません。我社には宝物のような薬剤師たちが沢山在籍してくれるようにやっとなりつつあります。頑張ってくれています。もうすぐです!
薬剤師という職業にプライドを持っていい意味で大暴れしてくれる時は!
Posted by 狭間紀代 at 2010年01月25日 09:51 | 返信
カンダタさま
大変、的を得たご質問とコメントに感謝いたします。
>MRという職種には「苦痛代」が含まれているという噂も聞きます。な?なにが苦痛なんでしょう。
医者は薬で利益を得ていません。薬価差益は実質ゼロです。MRは医者に薬を売らせて生活しています。まさにお医者さまさまです。だからわたしのようなアホな医者の不当な要求にも耐え忍ぶ以外、生きる道はありません。しかしその苦痛と引き換えに高収入を得ています。これでいいのでしょうか?なんとなく談合の是非と似ています。
>グリコみたいに、一粒で2度味わっています。(笑)
私はいつも言葉が足りません。それを上手くフォローしてくださりありがとうございます。
Posted by 長尾和宏 at 2010年01月26日 02:28 | 返信
狭間研至先生、狭間紀代先生
外科医がメスを捨てて薬局経営者に至った心境を想像すると呆然となります。
しかし誰かがやらねばなりません。その勇気に敬服いたします。
紀代先生のようなパワフルなお母上は見たことがありません。
こんなキャラが45年間も封印されていたのも不思議です。
偶然は必然。
ご縁を大切に、新しい世界を模索しましょう。
Posted by 長尾和宏 at 2010年01月26日 02:36 | 返信
長尾先生のパワフルな毎日を考えますと私もやりますよ?っ!
1月27日の強制拉致入院・面白い現実ですね!長尾先生のブログですから面白いなんていってられますが
とんでもないですね!こうなると喜劇のようですが・・私たち地域連携でやらなくちゃ!
もっと私たち薬剤師は現実を知らなくちゃ!頑張ります。有難うございます。
Posted by 狭間紀代 at 2010年01月28日 10:35 | 返信
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