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心筋梗塞で死なせないために

2014年09月09日(火)

先日、元・大相撲の龍虎さんが、掛川市の神社の階段途中で倒れられた。
あれは、おそらく運動負荷→急性冠症候群→急性心筋梗塞を起こしたのか。
先日、急性心筋梗塞で心肺停止82分後に心拍再開した日本記録について書いた。
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この日本記録については、8月11日のこのブログに書いた。→こちら


愛媛県の病院での82分が、日本記録だと報道されていた。
後遺症を残さないで社会復帰した例としての話しだ。

実は、それが日本記録の報道は間違いで、私の90分(以上)が真実だ。
このブログでも紹介したのだが、気になったのであれから調べてみた。

尼崎市医師会休日夜間診療所には、受診記録だけが残っていた。
しかしなんと11年前の症例だったのでカルテなどはもう無かった。(5年で廃棄)

私の記憶では、22時30分ぐらいにその日の1例目として歩いて受診された。
診察椅子に座った瞬間に倒れて絶命した。

即死だ。
ただし、私の目の前で倒れてくれたのが幸いだった。

医師であれば、おそらく誰でも、下壁の心筋梗塞→致死性不整脈→心室細動
であることを想像するだろう。

私はすぐに気管内挿管をして人工呼吸と心臓マッサージをしながら
カウンターショックを何度もかけながら、救急隊の到着を待った。

到着まで15分くらいだったか。
救急車の中でも、約25分間、心肺蘇生を続けた。

心肺停止後約35~40分後に兵庫医大救急救命部にバトンタッチした。
しばらく診ていたが、30~40分くらい電気ショックを繰り返しても心拍再開しなかった。

みんなが諦めかけたころ、なんとか心拍が再開しはじめて、私は当直業務に戻った。
そして2週間後、その人はなんと歩いて私のクリニックに御礼に来たのだった。

兵庫医大さんにも記録を調べて頂いたが、午前0時03分心拍再開だけが確認できた。
それだけでも凄ーい、と思った。

しかし肝腎の救急隊に、搬送時刻を問い合わせたら、記録は3年間しか保存しないと
聞き、日本記録の証明ができないと分り残念!!。

当時、救急医学会で発表しようとしたら、某大病院の救急部長から
「そんな症例、いくらでもある。発表しても意味が無い」と言われて断念したのが悔やまれる。

それにしても意外だったのが、救急搬送記録の保存義務がたった3年とのこと。
医療カルテでさえ5年保存なのに、何故?という感じ。

認知症で10年間行方不明になる人がいるのが分る気がした。
せめて10年ぐらいは、搬送記録を保存して欲しいな。

結局、私は、未公認日本記録保持者なのだ。
しかし蘇生を手伝ってくれた看護師さんやもう一人の当直医という証人はいる。

これは自慢話。

人を生き返らせる腕がいいのだ。
死なせる医者という勝手なレッテルを日本記録を塗り替えて汚名返上と思ったのだ・・・




先週、その兵庫医大の循環器内科に新しく赴任された
石原教授のお披露め講演を拝聴する機会があった。

演題は、「狭心症発作で病院に紹介するタイミング」だった。
懇親会では、上の昔話もした。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

急性冠症候群(ACS)は、早期に再還流できれば
・心電図変化なし
・CPK上昇も無いまま、治癒してしまう。
診断・治療は早ければ早いほどいい。
しかしどのタイミングで病院に連絡すべきかは難しい。
 
生化学マーカーで判断するのは間違い(手遅れ)
CPKが陽性になるまで相当の時間がかかる。
トロポニンも6時間以上かかる。
だからは心筋梗塞の早期診断には使えないが、
ACSの予後予測にはある程度使える。
 
 
非ST型心筋梗塞は軽症?(NSTE-ACS)は
ニトロを舌下して5分で改善しなければ119番すべき
 
心筋梗塞の死亡率は、
CCUができる以前 30% だったのが
CCUができて以降 15% まで下がり
現在 は       7% になった。
 
昔は、病院に来る前に亡くなる人が多かった。
 
安定狭心症は、ゆっくり受診でもいいが、
しかし不安定狭心症なら 救急車で受診させるべき。
 
10年間で心筋梗塞で亡くなるひとが半減した。
 
日本では、死亡率の低下というより、
心筋梗塞そのものが減ったのだ。
 
生活習慣病の予防(二次予防)で死亡率が50%減る。
週2回以上内服を忘れるとイベント再発が多くなる。
 




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