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ダイエット飲料で糖尿病?

2014年10月04日(土)

ダイエット飲料で、糖尿病のリスクが高まる?
ハーバード大学に留学中の大西睦子先生が研究されている。
実は、大西先生とは、シカゴでの死の権利・世界大会でもご一緒したばかり。
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大西先生の御専門は公衆衛生。
だから食べ物のから終末期医療まで実に守備範囲が広い。

シカゴで、1泊2日、ご一緒させて頂いたが彼女は実に優秀な研究者。
ボストンからシカゴまでたしか飛行機で2時間と言っていた。

先日、このブログでも大西先生が書かれた終末期のレビューを紹介した。→こちら
彼女は、ちゃんと論文を調べて、緻密な検証記事を書かれている。

たしか今日は、日本におられるはずだ。
私は、日本の盲腸である和歌山へ、そして今夜は日本の聖地、高野山へ。


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ダイエット飲料で糖尿病リスクが高まる!? 人工甘味料の“謎”を解く
 
この原稿は日経トレンディネットより転載です。
 (イラスト画像を含むオリジナル記事はこちら↓)  
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20140925/1060444/
 
内科医師
大西睦子
 
2014年10月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。
カロリーオフやカロリーゼロをうたい、人工甘味料を使用した飲料は、依然として人気があります。 今回は、この人工甘味料に関する最新の研究報告を解説していきます。
 
◆糖類使用の飲料よりダイエット飲料のほうが高リスク?
 
減量や血糖値をコントロールするために、カロリーゼロの人工甘味料を利用されている方は多いでしょう。でも、期待しているような効果が表れなかったり、逆効果だったという経験はありませんか?
 
実は、人工甘味料を利用して糖分やカロリーの摂取量を調整しているはずなのに、思うように減量できない、血糖値コントロールができないという悩みを抱えている人は、世界中にたくさんいるのです。
 
例えば、米国テキサス大学の研究者らは、2009年に、6814人の成人を対象に、8年間の大規模な追跡調査を実施。ダイエット炭酸飲料毎日を飲んだ人の36%にメタボリック症候群のリスクがあること、67%に2型糖尿病のリスクがあることを報告しました。
 
2013年には、フランスの研究者らが、14年間、約6万6000人のフランス人女性の飲み物の習慣を調査した結果を報告。これによるとカロリーのある糖類使用の飲み物も、ダイエット飲料も、ともに糖尿病のリスクを増やすことが分かりました。驚くのは、ダイエット飲料を1週間に500ml飲んだ人たちは、カロリーのある糖類使用の飲み物を1週間に500ml飲んだ人たちより、糖尿病のリスクが15%も高くなったこと。さらに、ダイエット飲料を1週間に1.5L飲んでいる人たちは、カロリーのある糖類使用の飲み物を1週間に1.5L飲んだ人たちより、59%も糖尿病のリスクが増えたのです。
 
日本からも、2013年、富山県の工場で働く2037人の男性(平均年齢46.2歳)を7年間追跡調査した結果が報告され、ダイエット炭酸飲料を週に1本以上飲む男性は、めったに飲まない男性に比べ、2型糖尿病(※注1)を発症するリスクが1.7倍になったとしています。
 
■参考文献
U.S. National Library of Medicine「Diet soda intake and risk of incident metabolic syndrome and type 2 diabetes in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA).」
U.S. National Library of Medicine「Consumption of artificially and sugar-sweetened beverages and incident type 2 diabetes in the Etude Epidemiologique aupres des femmes de la Mutuelle Generale de l'Education Nationale-European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition cohort.」
U.S. National Library of Medicine「Sugar-sweetened beverage and diet soda consumption and the 7-year risk for type 2 diabetes mellitus in middle-aged Japanese men.」
 
※注1:2型糖尿病とは、血糖を下げるインスリンの分泌やインスリンの効き目が低くなるタイプの糖尿病。中高年に多く、運動不足や肥満により発症する(関連記事)。
 
◆人工甘味料が腸内細菌に作用して代謝異常を起こす
 
これほど世界中で、同じような調査結果が報告されると、やはり人工甘味料を使っている食べ物や飲み物が、世界中に広がる肥満や糖尿病の普及に“貢献”している可能性はありますよね。
 
ただし、これらの疫学調査では、発症に至る詳しいメカニズムが分かりません。そこで現在、多くの科学者がこの謎解きに挑戦しているのです。
 
そんななか2014年9月17日に、イスラエルのワイツマン科学研究所の研究者らが、人工甘味料が腸内細菌に作用して代謝異常を起こすことを英科学誌「ネイチャー」に報告しました。
 
■参考文献
Nature「Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota」
 
まず、科学者たちは、人工甘味料の血糖の調整に対する影響を確認しました。最も一般的に使用される、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンという3種類の人工甘味料を使用。これらをそれぞれ水に混入し、同条件のマウスに与えました。混入量は、米食品医薬品局(U S Food and Drug Administration;FDA)によって許可されている摂取量です。するとアスパルテーム、スクラロース、サッカリンを与えられたマウスは、 水、あるいは砂糖水を飲んだマウスに比べ、11週後に、ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖を溶かした水を飲み、血糖値がどのように推移するかを確認するためのテスト)にて、血糖が上昇しました。特に、サッカリンを与えられたマウスの血糖値が顕著に上昇したため、以降の実験には、サッカリンを使用しています。
 
人工甘味料それ自体は、人体において食品として認識されず、胃腸で吸収されません。ところが腸を通過する際に、腸内細菌に変化が起こります。以前の研究では、人工甘味料のスクラロースを与えられたラットは、腸内細菌、特に善玉菌が減ると報告されています。
 
■参考文献
U.S. National Library of Medicine「Splenda alters gut microflora and increases intestinal p-glycoprotein and cytochrome p-450 in male rats.」
 
そこで研究者らは、腸内細菌叢(そう)が、この現象に関与しているという仮説を立て検討しました。つまり、腸内細菌が、人工甘味料のような新しい物質に反応することが、血糖値が上昇する原因だと考えたのです。
 
研究者は、腸内細菌への影響を見るために、抗生物質をマウスに与え、腸内細菌の多くを根絶(無菌マウス)しました。そして、人工甘味料を摂取したマウスの糞便を、無菌マウスの体内に移植しました。すると、マウスの血糖値が上がりました。
 
では、人間の場合はどうなのでしょうか? 研究者らは糖尿病ではない381人のダイエット調査票から、定期的に人工甘味料を多く摂取している人ほど、空腹時の高血糖、耐糖能異常(※注2)を示しました。
 
また普段、人工甘味料を摂取していない7人の健康な若者に、1週間、米食品医薬品局が推奨する、最大摂取量のサッカリンを摂取してもらい、継続的に血糖のレベルをモニタリングしました。その結果、7人のうち4人の血糖が上昇し、腸内細菌の構成が変化したことが分かりました。そのうちの2人の糞便を、無菌マウスに移植をすると、サッカリンを消費したマウスから糞便を移植した際と類似した、腸内細菌の構成と耐糖能異常が示されました。
 
ヒトでの調査は数が少ないなど、この論文に対して反論もありますが、“人工甘味料の謎解き”が前進したと思います。
 
一番古い人工甘味料のサッカリンが誕生してから、約135年。アスパルテームが日本で、食品添加物として指定されたのが、今から約30年前です。砂糖は、紀元前8000~1500年、南太平洋の島々の人たちは、砂糖の原料となるサトウキビを生産していたようです。それに比べると、人工甘味料の歴史は浅く、私たち人間の体のシステムにとっては新しい化学物質です。今後の研究で、さらにその影響が明らかになることが期待されますね。
 
※注2:耐糖能異常とは、ブドウ糖を代謝する能力に異常が生じている状態のこと。
 
大西睦子(おおにし・むつこ)
医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より、ハーバード大学にて、食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。
 

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