このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

Covid-19に対する医療機関の機能分化を

2020年05月10日(日)

日本医事新報5月号もコロナについて書いた。
「Covid19に対する医療機関の機能分化を」。
かかりつけ医の役割を、明確にする時期だ。
2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 


日本医事新報2020年5月号  Covid-19に対する医療機関の機能分化を 
                かかりつけ医の枠割の提案       長尾和宏
 
急がれる精度管理
 Covid19感染により急逝した有名人が続々とワイドショーで報道される。マスコミは連日、市民の不安を煽っている。その結果、PCR検査を求める市民が依然として多い。緊急事態宣言が緩和された後もPCR需要はしばらく続くだろう。各地でPCRセンターが続々と開設されている。医師会が主導して開業医や地域によっては歯科医も加わり検体採取に協力している。病院の負担を減らすことも「かかりつけ医」の役割であろう。長期戦が予想される中、いい動きである。
しかし検体採取には熟練を要求する。そのためかPCR検査の感度は5割程度と低く、検体採取の手技が悪ければ偽陰性を増やしてしまう。検体採取の手技によるバラツキがいったいどれくらいあるのか、精度管理や実態調査が急がれる。一方、血液や唾液とする新しい抗原検査キットが開発され保険適応になるのだろう。特に唾液はウイルス量が鼻汁の何倍も多く簡便なので期待が高い。既にPCR法との一致率が極めて高いことが報道されている。近い将来、PCRとこうした抗原検出キットが併用されるのだろう。またCovid19に対するIgG抗体の検査キットもたくさん開発されているので早晩、大規模な疫学調査の結果が発表されるのだろう。しかしどこまでCovid19感染を反映しているのか、各キット別の信頼に足る精度管理が求められる。他のコロナウイルスや変異ウイルスも感知するのかどうか気になる。精度管理が不十分な抗原・抗体検査は臨床現場を混乱させる。公的機関によるお墨付きと保険適応が待たれる。また、各種簡易キットとPCR検査の立ち位置をはっきりさせないと市民は混乱するだろう。
 
 
「かかりつけ医」のレベルアップ
 最近、ある大企業の専任産業医からこのような相談を受けた。「PCR陰性であってもコロナの可能性をきっちりと説明して自宅待機を命じて下さる臨床医はなかなかいません。コロナに対する各医師の認識や説明に幅があり過ぎ、産業医としての対応に苦慮しています。
発熱初日に「風邪」と安易に説明され、後のフォローをして頂けないクリニック、胸部レントゲンで異常なければ「コロナではない」と言い切るクリニック、血液検査で細菌性が疑わしいだけで「コロナではない」と言い切るクリニックなど、コロナではないと言い切る医師が意外と多いことに驚いています。普段は診察医の判断を最優先しますが、今回ばかりは一定の基準を定めました。基本的には発熱者は一週間程度の自宅療養、PCR陰性者には2週間の自宅療養をして頂くなどです。」(原文のまま)。
 産業保健から見ると「かかりつけ医」のCovid19診療のレベルアップが急がれる。「発熱者お断り」という貼り紙をしている医療機関があるが、発熱がないCovid19感染もあることを周知しないといけない。そもそも誰が感染しているか分からないからみんな困っているのだ。かといって、発熱=PCR要請でもない。電話でしっかり問診して上手に病院や保健所にトリアージをすることも最前線にいる「かかりつけ医」の使命であろう。せっかく誕生したPCRセンターを疲弊させずに上手に機能し続けさせるためにも、「かかりつけ医」のレベルアップが急務である。そして産業医との連携も急務である。日本医師会からCovid19診療に関する素晴らしい指針(新型コロナウイルス感染症外来診療ガイドについて(暫定版)http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200428_4.pdf)が出ているが実践的で役にたつ。医師全員がこのガイドラインを共有することが急がれる。
 
 
 
自宅待機者を「かかりつけ医」が管理
 PCR陽性の軽症者は病院ではなく行政が借り上げたホテルや宿泊施設での療養が勧められ、そこで医学的管理もしっかり行われる。ホテルは推奨されるのは自宅待機中に亡くなった方が大きく報道されたことも強く影響している。しかし子供さんがいなどの理由でホテルよりも自宅療養を希望する人のほうが多いようだ。一旦ホテルに滞在してもすぐに自宅希望に変わるが、法律ではそこまでの規制ができない。ではホテル待機者や自宅療養者を誰がどのように管理すべきだろう。感染症指定病院の医師はすでに病棟で手一杯で、軽症者まで手が回らない。
そこで地域の「かかりつけ医」が携帯電話を用いたオンライン診療でフォローすることを提案したい。体温、血圧、脈拍に加えてパルスオキシメータの酸素飽和度を朝夕にメールをしてもらい必要と判断すれば電話で直接問診する。これで重症化を早期に見つけることが可能と考える。経験豊富な開業医や在宅診療に精通した医師はちょっとした息遣いの変化で重症化を察知できるはずだ。必要と判断すればPPE装備の看護師に連絡して容態を把握する。このようにホテルや自宅での療養者は、オンライン診療をフル活用すべきと考える。
 今回のコロナ禍でオンライン診療が大幅に規制緩和された。まさか初診からオンライン診療が解禁されるとは思ってもみなかったが、あくまで期間限定の緊急措置らしい。従来の生活習慣病のオンライン診療とコロナ関連のそれは明確に区別すべきだろう。後者は24時間、メールや会話で重症化の兆しを察知する必要があるからだ。そのためには毎日、メールや電話を交せる体制が必要だ。従って、コロナ関連患者さんの保険請求は出来高制ではなく包括制にしたほうがいいのではないか。例えば1人の要管理者をオンラインで略治までフォローアップした場合に例えば1000点とかの診療報酬をつけてはいかがか。もちろんオンライン主治医の采配は、保健所が医師会に委託して地域の実情を勘案して行うべきである。
 
 
PCR陰性者もオンライン診療で
無症状のCovid19感染者が沢山いる。神戸市や慶応大学の抗体検査から実際のCovid19感染者数は日々公表される PCR 陽性者数の数百倍以上いると推定されている。当初より無症状者がCovid19感染を広げていることが指摘されているが症状がないため捕捉することは困難だ。仮に症状が出て医療機関を受診してもPCR 検査の対象外と判断されてきた。保健所は感度50%のPCR陽性者の管理には熱心だが、PCR陰性者や未実施者は“野放し”であることに町医者として疑問を感じている。
その結果、いわゆる“発熱難民”からの相談が絶えない。当院ではまずは電話で丁寧に問診してCovid19肺炎が強く疑われる人だけに絞り、時間的・空間的に動線を分離してPPE装備でCT検査を行っている。両側性のすりガラス陰影がCovid19に特徴的なので感染診断にCTが有用であることは前回記した。しかしCT画像で明らかにコロナ肺炎像を呈しても半数以上がPCR 陰性であった。その理由としては、前述した検体採取の手技やウイルスが肺の奥深くに潜伏し鼻の粘膜にあまりいないことなどが考えられる。このようにPCR 検査だけに頼ってきたCovid19対策にはいくつもの落とし穴がある。
従って PCR 陰性と判定された人も有症状期間は経過観察したほうがいい。PCRを受けた人は全員、Covid19に感染かもと思ったほうがいい。そこでPCR陰性の有症状者も、地域の「かかりつけ医」がフォローアップすることを提案したい。それはPPEないし濃厚接触とならない対面診療でもオンライン診療でも構わない。
大阪市淀川区にある十三市民病院は5月からコロナ専門病院に転身し稼働しはじめた。軽症~中等度のCovid19患者さんを受け入れECMOが必要と判断されたら専門施設に搬送するという。また大阪府は感染者の動向と空き病床をリアルタイムに一元管理しながら出口戦略を練っている。こうした先進的かつ包括的な試みは他の自治体にも広がるだろう。一方、市中に多数いる無症状感染者やPCR陰性者やPCR陽性軽症者は、地域の「かかりつけ医」が担当すべきであろう。第一波が収まっても第二波に備えるべき時期だ。幸い検査キットと治療薬の目途がつきそうだと聞く。そろそろ医療機関の機能分化を明確にしていく時期だと思う。


週刊誌は5月16日号に掲載される

-------------------


「COVID-19に対する医療機関の機能分化を─かかりつけ医の役割の提案」
Web医事新報
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14623
 
この雑誌はとても勉強になるので、医師は必読である。

日本醫事新報者の無料会員の登録をすれば、拙稿を無料で読める。
会員登録ガイドは下記。
https://www.jmedj.co.jp/files/news/20191001_guide.pdf
パソコンで医事新報のサイトを見たときに画面の右上にある
「会員登録」をクリックして入力する。
 


PS)

5月6日の全国公開在宅テスト→こちら
へのご応募、ありがとうございます。

5問中4問以上正解された方には、賞品を贈ります。
5月31日が締め切りです。どんどん参加してください。



 

2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ