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進化した日本透析医学会

2019年07月04日(木)

毎日新聞の報道を受けて、日本透析医学会が新しいガイドラインを提示した。
従来のガイドラインとは全く違うもので、かなりの議論があったと想像する。
特に「本人の意思を尊重する」はかなり進化した発信であり高く評価したい。
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学会トピック64回日本透析医学会学術集会・総会

透析を希望しない意思決定プロセスも提示へ
認知症患者の自己決定、保存療法の管理も検討
2019/7/2
三和 護=編集委員
 
横浜市で開催された第64回日本透析医学会学術集会・総会
 
公立福生病院(東京都福生市)で透析を中止した女性が亡くなった事例を受け、「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」(2014年)を見直している日本透析医学会は6月28日、第64回日本透析医学会学術集会・総会(6月28~30日、横浜市)で、終末期でない患者が透析を希望しない場合の意思決定プロセスを盛り込むなど、新たな提言の方向性を示した。

 新提言の方向性は、委員会の総意ではなく、委員長を務める岡田一義氏(川島病院、徳島県)の私見という形で提示された。

 私見では、提言の見直しに当たって(1)患者の自己決定権を尊重する、(2)患者が人生を全うすることを支援する、(3)尊厳性を重視する、(4)全国の医療機関で対応できるものとする――などを検討の基本方針としていることが示された。

 また、認知症患者の透析例が多いことから、認知症患者の意思決定プロセスについても検討する意向を示した。厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(関連記事)などを参考に検討する。

 医師や医療チームの基本的な姿勢については、「患者には自らの意思で医療を受ける権利と拒否する権利がある」ことを前提に、患者への説明においては「全ての治療の選択肢を示すべき」とした。腎代替療法の選択肢としては、腎移植、血液透析、腹膜透析、保存療法の4つを提示する。「透析非導入」は不適切な表現との判断から、「保存療法」を採用している。

 保存療法については、Conservative Kidney Management(CKM)に関する論文が多いことから、その最新知見を盛り込みたいとしている。

 新提言では、意思決定プロセスにおける「意思確認書」を重視し、そのひな型を提示する。意思確認書には、透析をしない場合に死亡する可能性が高まることや、希望すれば透析を導入できることなどを明記する。また、作成後も、病状の変化に応じて患者の意思を確認することを盛り込む。

 終末期ではない患者が透析を拒んだ場合については、まず医療チームと患者・家族で正常な意思決定であることを確認するプロセスを盛り込む。医療チームと患者・家族で意見が一致しない場合は、複数の専門家からなる委員会で議論する手順を示す方向だ。

 提言の見直しを進めているのは、3月22日に発足した「人生の最終段階における維持透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについてのガイドライン(案)委員会」。4月28日の第1回会合では委員会メンバーの顔合わせを行い、5月26日の第2回では、見直しのための役割分担を決めた段階だ。委員会名は、終末期に限らない事例にも対応するため「人生の最終段階」を外し、またプロセスについての考えを示すものであることから「ガイドライン」ではなく「提言」とし、「維持透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会」に改名している。

 今後、委員会で案をまとめ、学会会員の意見を反映させたうえで、年度内には新提言としてまとめたいとしている。
日経メディカルの20196月号で特集しています。
 
 「福生病院の『透析拒否で死亡』報道が投げかけたもの」で浮かび上がった「6つの疑問」について、日経メディカルの2019年6月号の特集で掘り下げました。

特集*福生病院「透析中止で患者死亡」
どうにも気になる6つの疑問


一連のマスコミ報道に違和感を覚えた読者も多かったに違いない。3月7日、毎日新聞が「透析中止 患者死亡」と報じたのを皮切りに、福生病院の透析患者対応について非難の声が広がった。シャントの不調を理由に医師が透析中止を提案することはあるのか、透析中止後に生じる呼吸困難などの症状を緩和する方法はないのか。この事件を通じて編集部が感じた、透析医療についての「疑問」を追った。・・・・・・・・・・・・・・・・・


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なんだかこのブログが大きく影響しているような気がする。

毎日新聞の報道を、偏向報道・捏造であると指摘し、
日本透析医学会の不甲斐なさを書いたのは私くらい。

たとえば
3月15日のブログ、「透析中止法報道への10の疑問」 →こちら


そしてついに、毎日新聞も、大胆な修正を1ケ月かけて、行った。

当初(2月)は、透析中止=殺人、という論調であったが、

6月1日に、180度の軌道修正を匂わせ →こちら
6月29日には、「終末期ではない患者も中止容認」を敢えて淡々と報じた。→こちら

そしてついに満を持して、
7月3日には、こんなに大きな特殊を組んだ。→こちら

まさに180度の大方向転換である。
半年もかかったが、よくぞここまで。


いずれにせよ、7月3日の記事内に番号をつけたみた。
1で、リビングイルの重要性を語り
2で、これまでの反省を述べ
3で、現場の意見もしっかり拾い
4で、釈徹宗さんの祖父からの教訓は今後の大きな課題とし、
5で、診療報酬とリンクさせる危険性を匂わせた。

まさに完璧なまとめだ。
これで一区切りである。

これは、私が2月に「必ず検証記事を組まないと新聞として終わり」
と記者に忠告したことに従ったのであろうが、見事に自己修正した。

「災い転じて福となす」とは、まさにこのことだろうか。

多くの人が、いろいろ考えた半年間。

有識者やTVのコメンテーターも無茶苦茶なコメントを発していたが、
今になればなにも知らずに勝手な想像だけで言っていたことに気付く。


惜しむらくは、デスクの謝罪コメントもあれば、完璧だったのに。
「現場を知らずに嘘の報道をして関係者にはゴメンナサイ」、と。→こちら

透析医学会が学術団体としてこれだけ正直に反省し、真摯に考えているのだから、
同様に毎日新聞も報道機関として、正直に、間違った過程を検証しておくべきだ。



透析医学会もここまでブッチャケたのならば、いっそのこと
1)週3透析 VS 隔日透析
2)腎移植の啓発、
という透析界の最大のタブーにも挑んで欲しい。


それでこそ学術団体、と言えよう。
患者のための医学会に変容すべし。

でも毎日新聞が「本人意思 絶対条件」と書いてくれたことに感謝する。

ついでに、「人生会議も本人意思を絶対尊重」と書いてくれたらいいね。


以上が、この半年間の透析報道への、私なりの総括である。


PS)
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この記事へのコメント

長尾先生が医療介護連携センターをされ、私をもどしてください。、頑張ってやります、

Posted by 峯 通子 at 2019年07月04日 12:53 | 返信

今、尼崎市医療介護連携部会にきていますが、誰も孤独死保険を知りません。
医療同意について話し合っていますが、身寄りない方に、ついてはケアマネに頼っています。ACPについては、ケアマネが後見人になることもおかしいです。ケアマネは契約者なので、後見人にはなれません、
せひ、長尾先生にしていただきたいです。

Posted by 峯 通子 at 2019年07月04日 02:54 | 返信

長尾先生の仰っていたことが通って、良かったです。おめでとうございます。
新聞メディアも、医療界も、意見を言えば聞いてくれるんだと思いました。
お金にはならないけど、真実が認められて良かった。
患者さんも人工透析とは違う、別の生き方、別の治療法を考えて、糖尿病や腎臓病から生還できるかもしれません。
タクシーに乗ったら、「昔、人工透析専門の病院へ輸送する介護タクシーをしていたが、全く儲からなくて大赤字を抱えて倒産した。今は普通のタクシー業で、一番成績の良い儲けを出して、赤字を解消した。
でも自分自身が糖尿病になった」と話していました。
「お酒やごちそうは控えなきゃいけないね。でもお酒もごちそうも止められないね。」と言ってお互い意気投合しました。

Posted by にゃんにゃん at 2019年07月05日 05:03 | 返信

やっと『日経メディカル』6月号が届いた。
「福生病院ーどうにも気になる6つの疑問」。
「問6。揺れ動く患者の意思に、医師はどう対応すべきか」。
日本臨床倫理学会の3・10クイックレスポンスの第9原則。
「本人の意向が揺れて、真意がわからない場合には、医療者は患者の生命の利益に沿うように行動することが原則である。このケースの場合、福生病院の医療ケアチームはそれを十分に認識していたのか。」

編集部。
「そもそも透析中止の意思は、患者の判断でいつでも撤回できる。福生病院は、Aさんの透析中止の意向を尊重することに執着し過ぎてはいなかったか。今後の検証が必要だ。」
「聖路加病院腎センターでは、腎不全の患者に対して、透析への意向や病状が変化するたびに、頻回に『ACP』面談を実施している。」
「長崎腎病院では、いざ透析を中止するにあたっては、倫理委員会が開催されている。倫理委員会には、理事長、院長、関連スタッフの他、他院から精神科医も招へいする。」

日本透析医学会。
ガイドラインを「改訂」するのは「医療者を守る」ためだと、公言している。

「患者学会」は、ないのか!

Posted by 鍵山いさお at 2019年07月08日 04:48 | 返信

「福生事案」なるものになぜか、読者のみなさま完全黙秘。
医療者。「同意書さえとればこっちのもの」というギルド的団結でご満悦。
そもそも「終末期」とか、「人生の最終段階」という行政造語には、
ヒトの「涅槃」「臨終」「往生」「断末魔」についての考察はなく、
肉塊自壊、死亡検案のための手続きの響き。
われら患者は、「多死社会」というベルトコンベアにのせる屑。

「平成」の相模原テロ事件、「令和」の伏見テロ事件。
ヒトなら、言葉にしなければならない。

世界に夢売る社長よ。「二方向避難の原則」は、1972年千日前事件以来の教訓ですよ。
権力には媚びる吉本社長よ。「口頭契約」社員には、恫喝か。

世の中、「そんたく」「どうかつ」の時代。
トランプと100%価値観共通の「日米同盟」。
心中を強いられる「和して同じる」時代。

Posted by 鍵山いさお at 2019年07月21日 01:17 | 返信

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